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山内 浩写真展


作者の撮影ノートより

撮影の前に

海外で撮影することが多い。費用、滞在期間、携行できる機材は限られる。事前のリサーチで目的地の知識は得るが、安宿が並ぶ通りはどこかとか、滞在予定地から歩ける範囲内に何があるかといった程度。目的地に着いた日はバザールを探し、屋台や食堂でおっかなびっくりの食事をしながら地元の人達を観察する。 服装、挨拶、作法…。虚勢を張って旅慣れた風を装ってはいるが、観察(というよりは値踏み?)されているのは自分かもしれない。言葉もマナーも分からない中で、さて明日からどう撮るかと思案する。自分がそこに来ても来なくても起こっているであろう出来事、自前の経験則では計れない非日常の中での、その土地の日常を撮りたいと思う。

最も印象に残ったこと

インドのバラナシはヒンズー教の聖地として知られている。毎朝夜明けとともに行われる信仰を現す行為としてのガンジス河での沐浴の風景はあまりにも有名だ。 しかしそれは聖なる河の水で身を清めるといった象徴的な意味合いを持つ行為ではなく、生活の中で水に関わること(入浴や排泄、歯磨き、飲水、洗濯など)を 出来るだけガンジス河で行おうという理念のごく一部に過ぎない。沐浴後、朝日を受けながら川面を走る風に濡れた体をなぶらせガンジスの水で沸かしたチャイをすする若者や、家の祭壇に供える為に小瓶に入れたガンジスの水を大事そうに指先でつまみ上げる初老の男、そして寺院に奉納する花にガンジスの水を振りかけながら祈りの歌を合唱する婦人達などを見ると、バラナシという街とガンジス河との強い繋がりを感じる。

作品エピソード

バラナシでの滞在中、何度かガンジス河に入って水の中からの撮影を試みた。事前のリサーチでは「河畔での沐浴はヒンズー教徒にとって神聖なものなので彼らの気分を害する行動は慎むこと」という主旨の文章を読んだ。至極当然のことだ。しかし、今までの海外撮影から得た最大の教訓は“ブック スマートよりストリート スマートたれ”ということ。毎朝ガート(公共の沐浴場)に出掛け、ヒンズー教徒に混じって見よう見まねで沐浴をする。最初は怪訝だった彼らの眼差しが、日を重ねるごとに受け入れてくれた者のそれへと変わる。私が空気か石ころのようにそこに居ることを気にしなくなってくれる。他聞から得た知識に束縛されるより、眼前の光景で対峙する被写体との間合い、距離感、アイコンタクト、物腰、ジェスチャーなどを駆使して得たいイメージへの活路を見出すのだ。現場の路上で撮影者と被写体の間に起こる呼吸の一致が机上の倫理論を裏切る時、カメラを眼の高さに上げる。

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