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茂手木秀行写真展


作者の撮影ノートより

撮影の前に

仕事であっても、個人的な作品であっても写真を撮る際には、そこにかけるエネルギーのほとんどは準備に費やされるものだと思う。ロケハンであったり、撮影機材の準備であったりと撮影以外に費やされる時間はとても多く、それがすんでしまうと、撮影はとてもオートマチックだ。事前に決めた場所に行き、事前に決めた手法で撮影をするだけだ。ロケハンについていえば、フォトグラファーとして過ごしたこれまでの中で、取材や旅行で行ったことのあるところがベースになっているが、その情報は古い。そこで、僕の作品を良く知ってくれている旅行好きの友人の写真を多いに参考にさせてもらった。感謝である。しかし、さらに子細なロケハンはネットとグーグルアースで行った。デジタルの時代であることをとてもありがたく思う一時である。撮影手法も、ポラロイドタイプ55で20分露光と決めてあるので、その手法に従い、現れてくるであろう画像を想像しながら構図を決めるのである。タイプ55は紙焼きとネガが得られるが、今回使うのはネガだけである。現像転写済みのネガを現場で、停止、定着、水洗を行う。その方法を考えることも、作品を作る上でとても楽しい作業であった。

最も印象に残ったこと

入念な準備を行っていたとしても、やはり想定外の出会いがある。風景との出会いでいえば、宮古島と男鹿半島が印象深く、長い時間を過ごした。なかでも男鹿半島は冬の雪降る中での撮影で、厳しいものだった。男鹿半島の駐車場には何件かの土産物屋が、あるがそのなかの一件にとてもお世話になった。朝から夕方まで撮影する間、撮影基地としての場所を提供して頂いた。風も強く、雪が舞う戸外で、4×5カメラで20分の露光をするのだ。まさに芯から体が冷える。ワンカットを終えるごとに石油ストーブの燃える暖かい土産物屋に逃げ込むのだ。体が溶けるまでの間、お店の方と他愛ない話をしながら、暖かいお茶と郷土料理の石焼なべを頂いた。男鹿半島の風景とともに忘れ得ぬ味となった。

作品エピソード

このシリーズで最も長い撮影に出かけたのは2008年の正月だ。10日間の予定で東北を巡った。男鹿半島もこのときである。ほとんどを車中泊で過ごす旅であった。日が昇って暮れるまで撮影をし、次の予定地近くまで、夜の間に移動しなければならない。そこで困るのが、銀塩ならではの薬品作業だ。ことにネガの水洗が問題だ。水洗は持ち歩くには大量の水が必要なので、そのほとんどを夜の公園で行った。夜に公園の水場で水洗をするのだが、真冬の深夜に防寒着で着膨れた男が一人、何やら怪しいことをやっているのである。幸いというか、残念ながらというかそこで人に遭うことはなかった。しかし、その姿は自ら笑ってしまうほど怪しさ満点であったのである。10日間の旅で、会話をしたのは、男鹿半島だけだ。それほど、人と出会わぬ旅だった。日本の意外な広さを感じた気もするし、人が見たいと思う場所と僕が見たいと思う風景のある場所には、なにやら隔たりがあるのではないかとも思える。風景を撮る旅をすると人と話す機会が極端に減る。そのことがいつも撮影のエピソードであると思えるのだ。

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