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澤田勝行写真展


作者の撮影ノートより

撮影の前に

旅はいつも風のむくままです。私は大阪駅から数駅の場所に暮らしていますが、家を出てから最寄り駅に着くまでに、行き先が決まっていないのは日常茶飯事。青春18きっぷを片手に九州を目指すか北陸へ向かうか、はたまた大阪の街を彷徨い歩くか、その時の気分次第ということも少なくありません。予め地図をめくって気になる土地を見つけていても、道すがら気になる場所があればすぐに行き先変更となります。どこに行くか判らないので、その日の宿はその日の夜に決めるのが常です。しかし、どこを歩いても、その街の「風」を感じ取りながら、人々や風景との出逢いのアンテナを張る、そのことに変わりはありません。何時訪れるかもしれない出逢いを逃さぬよう、五感を研ぎ澄ませながら、二眼レフカメラを手に街から街へ、旅は続きます。

最も印象に残ったこと

日本各地を歩き、まず感じたことは、「人々の瞳はまだまだ輝きに満ちている」ということです。昨今、人々の関係性が希薄になり、他者と関わることが少なくなったといわれますが、それは私にとっても決して無縁なことではありません。しかし、カメラを持つ、ということは他者との関係を恣意的に築いてゆくことです。心を開き、出逢いの鍵をこちらから開けてゆく。人々との出逢いを大切にすることを心がけながら、あてのない小さな旅を繰り返してきました。そのなかで、人々の「瞳」、その輝きに心が躍りました。いくつかの言葉を交わし、二眼レフカメラを通して見つめる名も知らぬ人々の瞳は、私の思惑など一蹴してしまうだけの力を持っていました。写真の中の瞳は、ひと時の出逢いを超えて永遠に輝き続けます。

作品エピソード

2007年8月6日、一路西へ向かった私は、夕方広島に辿り着きました。しばらく広島駅周辺を歩いた後、平和記念公園のある元安川のたもとへ。大変な混雑の中、少し離れた場所にある小さな河原で、地元の小学生達が手作りの燈籠を川に流していました。そこで一人の少年が私の心を引きつけたのです。力強い文章の刻まれた、一際存在感のある燈籠を抱いた少年。私は彼の元へと駆け寄りました。真っ直ぐにレンズを見据える透明な瞳からは、彼のかけがえのないメッセージが感じられ、それは、私がこれまでの旅で出逢った中で一際力強いものでした。静かに数回シャッターを切った後、ふと背後に目を遺ると、遠くで彼の母がにこやかにこちらを見守ってくれていました。夕闇迫る淡い光の中、私を包んだ心地良い感覚は今も忘れることができません。

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