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北田祥喜写真展


作者の撮影ノートより

新たな試み

今から21年前、和歌山の小さな町で生まれた赤ん坊も、今年は大学を卒業する。
この「続・和歌山ブルース」という作品は生まれながら、すぐに父の都合で地方を転々とした私自身が「故郷」を作り上げたものだ。
もし和歌山で育っていれば、どのような風景に出会っただろう?
昔の和歌山の暮らしは、どのような生活だっただろう?
その問いに答えるためには、現在の和歌山を単に徘徊するだけでは答えは得られない。重要なのは技術云々でなく、感覚を過去にタイムスリップして郷愁を肌で感じ、いかに懐かしい空気をフィルムに焼き付けるか、だと思う。

最も印象に残ったこと

和歌山南部を取材したときのこと、大阪へ帰る特急列車はもうすぐ出発の時間。現在地は町外れで、駅までは約10分。撮影を切り上げ、全速で駅に向った。が、そんな時にもカメラを向け、ついに、最終列車を逃してしまった。
そんな時、駅の古びたベンチで路頭に迷っていた私に老婆が声をかけてきた。「雑談している場合ではないのにな」と思いながらも熱心に耳を傾けた。すると老婆と意気投合し、「あんた、いい青年だなぁ~」「おやつあげるから」と言われ、家におじゃますることになった。(笑)
晩御飯もいただき、そろそろ帰ろうとすると「何をいっとんしゃ~泊まっていき!」と、一晩お世話になった。疲れからか翌日9時に起きると、食卓の上には朝ご飯がこしらえてあった。そして、一泊の予定のはずが、調子に乗り二泊もさせていただいた。
今、一緒に過ごした時間の中でも、別れの時に見た老婆の表情がとても印象に残っている。我が孫のようにかわいがってもらった老婆に感謝したい。

今後の作品制作について

今後も「和歌山ブルース」シリーズは続けていきたいと思う。作品制作において私が気がかりなのは、和歌山を取材する度に和歌山の独特な空気がなくなってきていると感じる時である。現代における社会の急速なシステム化。古くから日本人の中にあった共同体意識の欠如・・・。例えば、地域、ご近所という共同体、家族という共同体。家庭の中心的存在の、お母さん。一家を支える、お父さん。孫の面倒を見る、おじいちゃん。近所のおばちゃん。時代は完全に止められないし、逆戻りは出来ないことは理解できる。しかし、人を信じられない世の中や、孤独を感じるほどの個人主義にはなってほしくない。
これからも、人の暖かさを思い出す作品を創ってゆきたいと思う。

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