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近藤伍壱写真展


作者の撮影ノートより

撮影の前に

「ヨーロッパ各地を巡って作品を作ろう」そう思ったのは、出発する半年くらい前の事だったでしょうか。
まずイタリアから入り、順序よくヨーロッパを巡るにはどうしたら良いか。旅の同行者である妻と共に色々と頭の中でシミュレーションをしているうちに、話題はいつしかアイスランドの話になっていきました。アイスランドという国の名前を聞いても、オーロラが観測できるとか、北極圏に近いとか、いずれにせよ僕にとっては全くの別世界の話であり、自分がその地に足を踏み入れるなど、それまで一度たりとも考えた事がありませんでした。
しかし、アイスランドについて調べていくうちに、以前から頭の中で「いつか表現してみたい」と思い描いていたあるイメージと、どこか通じるところがあることに気がつきました。
この頃から、アイスランド行きの話は急速に現実味を帯びはじめ、急遽三ヵ月を予定していた旅を延長し、アイスランドも予定に組み込むことになったのです。

最も印象に残ったこと

空港に降り立つと夏だというのに、何とも言えない冷たく強い風が体温を急激に奪っていくのを感じました。
ここはアイスランド、ケフラヴィーク国際空港。首都であるレイキャビークまではシャトルバスで30分。ポツポツと降りはじめた雨は、ウインドウガラスの表面を滑るように長く伸びて後方へと流れていく。水滴の向こう側に見える景色は、全くと言っていいほど樹木が無く、人の気配も感じられないグレーの世界。快適な室温に保たれたバスの車内と窓の外に見える極限の世界とのギャップに、現実味のない違和感を感じていました。
アイスランド内陸部。360°見渡す限り樹木が一本も生えていない荒涼としたその景色のただ中に立つ。木もなければ建物も、人の気配も全くない。 遮る物がなければ風の音は耳鳴りとしてしか感じられない世界。考えを巡らせて想像する事と、現実にその場に立って実感する事とは、面白いほどに異なった。
僕はこの地に立ってはじめて、「何もない」という事を知った。
そして、ここに何を求めてやって来たのかを、改めて考える必要があったのです。

今後の作品制作について

自然と人間、そして文明と文化は、長きに亘って互いに深く影響を与え続け、その結果として景色という「造形」となって、今日、私たちの目の前に存在している。それら景色という「造形物」の中に時折感じる「何か」。
黒の濃淡だけで事物を捉えるモノクロ写真は、感じることはできても決して触れることのできないその「何か」を、適度なスタンスを保ちながら表現してくれる、重要な表現手法となってきました。
今後も微かに感じる程度の「何か」を、感じたままに誇張することなく、見る側に対しても決して押しつけない、間合いというかスタンスで、写真の中で表現できたらと考えています。

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