プレミオ通信

No.39

2016年10月・12月開催のフォト・プレミオ入賞者決定!

先日、「フォト・プレミオ2016」第3期(2016年5月末締め切り)の選考会が行なわれ、4名が新たに選出されました。今回の受賞者の作品はどのような点が評価されたのか、また、選考委員が作品を選んだポイントなど、選考会でのコメントをそれぞれの作品ごとにご紹介します。

石井保子

石井保子「特急電車64号 」

電車の窓から、始発駅から終点までを撮ったという映像です。そして、あえて階調を荒らしているところが、この作品の大きな特徴だと思います。

「写真そのものが見る人に移動する感覚みたいなものを与えてくれていますよね。それが際限のない移動ではなく、限定された空間の中での移動であるがゆえに、見る側の自由度が高いというか、物語を自分の中に作らせてくれるという点で見ていて楽しいユニークな作品だなと思いました」

これをビデオで表現すると辛いものになるでしょうね。やはり、写真ならではの魅力がここにはあるように思います。

「目には入っているけれど認識していない風景が、あらためて見てみると意外な発見があったりして、逆に面白く自分で認識するようになってくるというのは、写真が教えてくれる大きなことのひとつだと思います。それがこの作品ではうまく成立しているんじゃないでしょうか」
「写りにくかったりする時間帯の写真を意識的に選んでいるような感じがして、画質の美しさやイメージの秀逸性を求めるデジタル写真や日常的なSNSの写真の傾向から、逆に引き算していくようなイメージをあえてつくり出していますね。画質をわざと良くないものにしているのも、視覚の別の可能性を見せるという意味で面白いなと思いました」

武内和志

武内和志「Like Us」

写っているのはアメリカの南東部の光景です。いままでのアメリカをとらえた写真と違うところがあるように思いますが、まずはカラーとモノクロを組み合わせたというところがユニークですよね。

「作者はカラーとモノクロを意図的に組み合わせて並べていると思うんですが、その並びもまた、見ていて刺激的なものがあると思いました」
「出合いがしらの写真を積み重ねていくような、ゲイリー・ウィノグランドやリー・フリードランダーといった写真家の撮り方を彷彿とさせる作品ですね。こうした撮り方の中から、私たちがいままで見る機会のなかった、抜け落ちてきたようなディテールがぽろぽろと見える感じが、この写真の魅力だと思います」

普通に生活している人たちがそのまま出てきていて、距離感もとても近いところから撮っていて、見るたびごとにいろんなことを教えてもらえる写真ではないでしょうか。

「それほどクローズアップされてはいませんが、疲弊した部分というか、アメリカ社会の中の影の部分も、そこはかとなく感じられますね。また一方で、日常生活の幸福なシーンなども写っていて、立体的にひとつのアメリカ社会の特質みたいなものが浮かび上がっているところがとてもいいと思います」

甲賀民人

甲賀民人「雪街」

日本は雪のある地域がたくさんあるので素晴らしい作品も多いんですが、また違う、もうひとつの雪の景色を見せてもらったという感じがしました。

「雪をひとつのきっかけとして、具体的な地名のある場所ではなくどこか不思議な街の中に入っていくような、ちょっと面白い体験のできる写真だなと思いました。作者が考えて“創った”というと少し語弊があるかもしれませんが、見る側を誘導していくその先にある街という気がして、その誘導の仕方が面白いなと思いました」
「雪の降る地域の写真だと、どうしても“地方”というイメージが強調されたりしますが、この作者の目からはそれがあまり感じられないのも新鮮です」

有名な小説にも似たタイトルが面白いですよね。作者がトンネルをひとつ抜けて、雪の国へ入っていったようなイメージを連想させます。

「それと、人物がほとんど登場していないというのも、かえって私たちの想像力を掻き立てるようなところがあります。ひとつの小説のような展開がここから始まるんじゃないかという気がして、楽しめる作品になっていると思いました」 「雪がたくさんあると、見慣れた写真になるからでしょうか。雪解けに近い頃をとらえていて、“雪街”といいながら、あえて雪はそれほど主張していないのも一つの着眼点でしたね」

山下 海

山下 海「群像 ~辺境に生きる人々~」

東南アジアの複数の国で撮影されたという写真です。自然に頼った、ある意味で厳しい生活をしている人々のポートレートになっています。

「どんな遠隔の地にも少しずつグローバルな文明が押し寄せてきていて、それは着ている服とか、身に付けている物とかに痕跡が少しずつ見えているところが面白いですよね。それと同時に、地域ごとの差異ももちろん写っていて、いま全世界を覆いつくそうとしているグローバリゼーションの力と、その土地に根ざした文化の力みたいなものの両方がより浮き彫りになっていて、魅力的だと思いました」
「アジアの広い地域を俯瞰できるような視点がここにありますね。教科書的とでもいうんでしょうか、地理を楽しく学んでいるような、そういう時間を過ごすことができて、二次的な旅の経験としてとてもスリリングなものだと思いました」

江戸末期から明治初期に外国の写真家が日本を撮った、あの一群の写真を思い出しました。

「そうですね。日本のさまざまな風景や風習がとてもエキゾチックに撮られていたように、他所から来た人にその土地の典型がピックアップされて見えてくる面白さかもしれません」
「数十年後にこの人たちがこれを見て、“こんな時代があったんだな”と言うと思うんですけど、そういう歴史的な意味あいからも有益な見方ができるんじゃないかなと思いました」

運営終了のお知らせ

当館は2017年1月23日を以って運営を終了しました。長い間ご愛顧いただき、本当にありがとうございました。

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