プレミオ通信

No.37

2016年4~6月開催のフォト・プレミオ入賞者決定!

先日、「フォト・プレミオ2016」第1期(2015年11月末締め切り)の選考会が行なわれ、6名が新たに選出されました。今回の受賞者の作品はどのような点が評価されたのか、また、選考委員が作品を選んだポイントなど、選考会でのコメントをそれぞれの作品ごとにご紹介します。

吉川恭平

吉川恭平「牛深」

自分の住んでいる土地を、丁寧に撮ろうとしている意欲が伝わってくる作品です。「天草」という自然豊かな土地に暮らす人々の姿が、私たちの心に響いてくる写真になっていると思います。

「産業が写っていたり、学校生活が写っていたり、親戚の会合が写っていたりと、地域の社会生活を成り立たせているエレメントがさまざまに織り込まれていて、地元の活動をしっかり見ようとしているところが素晴らしいと思いました。まず、地元の生活をきちんと全般的に眺めて、それら一つ一つに好奇心を持って見ている感じが伝わってきて、いい作品だと思います」

モノクロで表現されているからこそ、この世界に入っていけるというところはないでしょうか。

「そうですね。確かに、色が付いてくるとまったく違う世界になっていくような気がします。それは、この作品が昔からある“日本の集落”の雰囲気を感じさせるからじゃないでしょうか。そのことが、モノクロ写真の魅力をさらに引き立たせているように思います」

林田真季

林田真季「JAPAN-GO-ROUND」

作者は「外国を撮るように日本を撮りたい」とコメントされていますが、確かに日本的ではない光景を意識されていて、目新しい日本の大地、海辺が見えてくる写真になっていると思います。

「幕末や明治初期に日本を訪れた外国人の写真家が、自国の景色と同じような景色を日本に見るような“まなざし”があって、それをちょっと思い起こしました。あえて外国人の“まなざし”に重ね合わせて見るような行為を、意識的に、批評性を持ってやっているところが面白いと思いました。それをまた、iPhoneでやっているというところにも、いい意味での作為を感じます」

“日本感”が拭われた写真と言うんでしょうか、新しい日本の風景写真を見せてくれたように思います。

「写真を撮る人の大半といっていい人々が、花や風景などを撮っていると思うんですが、そこには花鳥風月というか、やはり“こうあるべきだ”というフィルターを掛けている場合がけっこう多いと思うんです。しかし、この作者の視点には、そうしたフィルターがまったくなくて、そのことが私たちの目を驚かせてくれたんじゃないかなと思います」

児玉和也

児玉和也「風の吹く場所」

作者自身の祖父を中心に、カメラを向けた作品です。作者がおじいさんといっしょにいると爽やかな風に吹かれているような気持ちになるそうで、それが作品のタイトルになっています。

「人物に寄りすぎることなく、心地よい距離を保ちながら、ひとりの男性が生きている姿を描いていますよね。特にドラマがあるというわけではないですが、そこにこそ日常の美しさとか、素晴らしさがあるのかなということを感じました」 「こういう小規模な農家を営むお年寄りは、亡くなってしまえば田畑を引き継いでいく人がいないので、ここにあるような田園風景が今後は見られなくなる可能性があるわけですよね。その予兆のようなものを作者は感じていて、こうした風景を大事に思って、いまのうちによく見つめておこうと考えたのだと思います。おじいさんの生活とともにおじいさんが守ってきた風景を見ていこうという意志が感じられて、とても丁寧に、特に風景を撮っているなと思いました」

敬意を持って撮っていることが伝わってきます。「どうだ、すごいだろう」というんじゃなく、作者の想いがじんわりと伝わってくる映像じゃないかなと思います。

岩田えりか

岩田えりか「YOU LIVE HERE」

作者がある田園地帯へと通って、その田んぼや畑を撮影したという写真です。いわゆるふつうの風景写真とは、またぜんぜん違うものに仕上がっている作品です。

「作品化ということをぜんぜん意識していなくて、目の前に現れたものをふつうの標準レンズ的な視野で淡々と見ているというところが、この作品の魅力かなと思います。どこかで見たんだけど、忘れてしまっている光景がもしかしたらここにあるのかなという気がします」

水田や畑というのは、とても写真化しにくいものだと思うんですが・・・

「そうですね。広くてフラットな場所というのはなかなか撮りにくいと思うんですけど、それを自発的に水田以外の要素も組み込むことで成功した作品になっているんじゃないかなと思いました。作品化しようとする意識があまりないことが奏功してか、不思議に上手い形で水田という場所、あるいは稲作という場所をとらえているような気がします」
「最初に見たときに、なぜ、とんぼが繰り返し出てくるのかなと思っていましたが、とんぼ=秋津というのは日本の象徴のようなところがあって、そういう意味でも面白いことを言っているなと、“田園写真”としての完成度にも感心させられました」

森井勇介

森井勇介「Tinku」

ボリビアの伝統的なお祭りをあえてモノクロで表現した作品です。とても荒々しいお祭りだそうですが、それだけが強調されることなく、風土や暮らしなどをとらえた静かな視点からの映像になっていると思います。

「あまりボリビアに対する先入観がなく撮っているところに好感を持ちました。もちろん、南米に対する自分の中のイメージがあって訪れているとは思いますが、それを採集しようとしている気配がなくて、現地で出会ったものや異文化に率直に反応して、面白がったり驚いたりしている、そういう気持ちの起伏が写真の中にあって、いいなと思いました」
「こうした取材は、特にカラーの場合はどう撮ってもいつかどこかで見た写真になりがちですね。それを避けるために、作者はあえてモノクロを選択してプリントしていますが、それがとても効果的だと思いました」

確かにそうですね。この映像を見ても、南米ということを意識しないと思います。

「地球の反対側にある国の映像ですが、ちょっと身近な感じで見られる。フィクションに近いような遠いところにある世界を見せつけられるという感じではないところが、とてもいいなと思いました」

オカダキサラ

オカダキサラ「©TOKYO 全てのドアが開きます。」

いわゆるスナップショットですが、日常的にありそうで、じつはあまり見られないような光景を、とても丁寧かつ熱心にコレクションした作品だと思います。

「こういう視線がいままでなかったわけではないと思うんです。特にデジタルカメラの出現以来、なかったわけではないんですが、やっぱりあらためてこれだけの視線の鋭さを見せられると、作者の際立ってユニークな資質を感じますよね」
「それほど珍しいシーンばかりじゃないんですが、これだけ新鮮に見える、あるいはよく採集してきたなと感心できるのは、日常的に私たちの目がこういうものを見なくなってきているのかもしれないですね」

自分自身より周りで起きていること、他人の世界に興味を持っているというところがいまや新鮮だと思いました。

「世の中に人がいることに本当に関心を持っているというか、自意識の狭いところで何かを考えているんじゃなくて、ドラマは世界に、そしてストリートにあるというところが、何か写真の基本みたいな感じがして、そういうことを考えさせてくれる作品でもあると思います」

運営終了のお知らせ

当館は2017年1月23日を以って運営を終了しました。長い間ご愛顧いただき、本当にありがとうございました。

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