content

プレミオ通信

フォトプレミオ 2014 入賞者

第1期展示入賞者
(11月末締切)
第2期展示入賞者
(2月末締切)
第3期展示入賞者
(5月末締切)
第4期展示入賞者
(8月末締切)
プレミオ通信 No.29 プレミオ通信 No.30 プレミオ通信 No.31 プレミオ通信 No.32

FOTO PREMIO NEWS No.31

2014年10月・12月開催のフォト・プレミオ入賞者決定!

先日、「フォト・プレミオ2014」第3期(2014年5月末締め切り)の選考会が行なわれ、4名が新たに選出されました。今回の受賞者の作品はどのような点が評価されたのか、また、選考委員が作品を選んだポイントなど、選考会でのコメントをそれぞれの作品ごとにご紹介します。

稲宮康人「あたらしい世界 -対話の記録-」

“2011”というとすぐ震災のことだとわかりますが、その記憶も少しずつ忘れられていくんでしょうか。そうならないように、作者はこれからもずっと撮り続けていきたいという決意表明の意味で、この作品を“一里塚”にしたいと言っています。

「熱狂や興奮のようなものが覚めた後に思いをどう持続するかという問いかけが、この作品のひとつの意義になっていますよね。惨状のクライマックスをどうやって捉えるかに腐心したのが震災直後の写真だったとすると、この作品はアンチ・クライマックスというか、出来事が終わった後にもずっと風景は続き人の営みも続いていくということを、どうにかして写真に表すことができないだろうかという問いから出発している、そこが意味のあるところなんじゃないかなと思いました」
「たとえば、とても静かで美しいブルーの海が写っていたりしますが、これがあの災害をもたらした場所なんだと思うと写真の見方がまた違ってきますよね。震災直後に出てきた多くの被災写真とは明らかに違うものが、この作者の目から生まれてきているのかなと思いました」

さらに、撮影地の細かな記述がないということも、この写真を見つめていく上でとても大事なファクターになっているような気がします。

「報道的なアプローチでは必要とされるような詳細な場所や時間の要素をあえて省いて、普遍化しようという意図があるんじゃないかと思います」


竹下真由子「Hillside, Tokyo」

東京近郊のいわゆるニュータウンを撮った写真ですが、この作品もまた場所を特定していません。どこにでもあるような、しかし独特の空気感が漂う光景を作者は見つけてきてくれたと思います。

「東京の郊外が写真の対象になり始めたころには、そのどこか近未来を思わせる人工的な空間がたいていはネガティブなテーマを持つ舞台として捉えられていたと思います。それが、しばらくして郊外生活が一般化した時期になると、今度は必ずしもネガティブなものだけではない意味に変わってきたと思うんです。この作品を見ると、それがさらにもう一度別のものに変容しつつあるというところを捉えたアプローチになっていますね。おそらくニュータウンの風化や老化などと結びついて、再び“不活性な”というか、ネガティブな要素が確実に広がりつつあるというところに気づいて記録したらしく、面白い視線だと思いました」
「確かにそうですね。自然と人工の対比が写されている部分も、かつてあった自然の力と人為的な力の激しい対立というものは影を潜めて、ひたすら緩く崩壊していっている、あるいは荒寥となっているような不思議な静けさを湛えています」

人がほとんど登場しませんが、そんなところもこの作品の雰囲気を決定づけているように思います。

「風景を撮る人はよく朝や夕方の光を好んで撮影しますが、この作品は昼間のとても白々とした光を使っています。そこもやはり、意図的に情緒的なものを排して撮ろうということだと思いました。その視点がきちんと伝わってきます」


島村実那「Trip to the Market」

カンボジアの大きなマーケットで、デジタルカメラに三脚を付けてスローシャッターで撮った作品ですが、いままで見たことがないような市場の写真になっています。

「視点がわりと限定的で、淡々と撮っている感じがするんですが、できあがった写真はじつに多様で、マーケット全体が体験できるような臨場感にあふれた作品になっています。生理的なところに訴えかけて五感を鋭く刺激するような、見る人を巻き込んでいく、力のある写真だなと思いました。それは、おそらく作者が実際にそう感じながら、驚きながら撮っていて、それが臨場感を与えてくれるひとつの理由になっているんじゃないでしょうか」
「体験型の作品というか、ジオラマの中に入って同じ時間を共有させられているような、そういう意味での臨場感がありますね。意味やコンセプトで誘導されるんじゃなくて、その場に居ながらマーケットを体験できるような感覚が魅力だなと思います」

スローシャッターがとても効果的に使われています。

「ビデオカメラのようにずっと流れているんじゃなくて、動きが感じられたとしても、これは静止画として止まっていますよね。だからこそ、この世界に入っていき目をさまざまに凝らすことができるんじゃないかと思うんです。写真の大きな魅力なのかなと思います」
「そうですね。同じような状況をビデオで何面ものスクリーンを使って見せられたとしても、この作品で感じるものとはかなり違うでしょう」


吉田亮人「Brick Yard」

バングラデシュのレンガを作っている人たちを捉えた映像です。よくできた画面構成で見せてくれていて、相当な写真の技術を持った方だなと思います。

「正統派の写真撮影で、すごく写真を勉強されているのかなと思いました。感性だけで撮っていない、相手をしっかりと見つめて撮っているという印象があります」
「身体を使って何かを作り上げる根源的な労働の姿がなかなか見えにくくなっているいま、あらためてそういうものに思いを至らせてくれる内容になっていて、映像を使って何かを伝えるという言語的な使い方が上手な方だなとも思いました」

いまの日本にいて労働をテーマにするというのは、かなりむずかしいところがあるでしょうか。

「いつも見えるものとしてあった“労働”の現場が見えなくなって、見えたとしても全体に対する部分といった感じで“労働”の深さを実感する機会が減ったいま、この作品も産業の一部の工程という意味で部分には違いないのですが、見ているとじつに鮮やかに何物にも代えがたいひとつの完結した労働の世界のイメージが強く浮かび上がってきます。使われる労働ではなく、人が主役といった尊厳すら感じさせてくれます」
「肉体に負荷をかける辛さがあると同時に、身体を動かして何かをすることのプラスの価値と、その両面が根源的な労働の風景には必ず付きものなんだということをあらためて教えてくれる作品ですね」
「考えてみれば、古代文明の時代から私たちはずっとこういう作業をしてきたわけですよね」


入賞者のご紹介へ戻る

ページトップへ戻る