content

プレミオ通信

フォト・プレミオ 2010 入賞者

第1期展示入賞者
(11月末締切)
第2期展示入賞者
(2月末締切)
第3期展示入賞者
(5月末締切)
第4期展示入賞者
(8月末締切)
プレミオ通信 No.13 プレミオ通信 No.14 プレミオ通信 No.15 プレミオ通信 No.16

FOTO PREMIO NEWS No.16

先日、「フォト・プレミオ2010」第4期(2010年8月末締め切り)の選考会が行なわれ、6名(2011年2月4名、3月2名)が新たに選出されました。今回の受賞者の作品はどのような点が評価されたのか、また、選考委員が作品を選んだポイントなど、選考会でのコメントをそれぞれの作品ごとにご紹介します。

奥 初起「404:Page Not Found」

開発途上国を中心に、世界各地に出かけて、その土地の都市化、工業化の様子をとてもシャープな視点で撮影された作品です。

「それほど新しいタイプの作品とは思いませんが、これだけいろんな場所で撮られた写真を見せられると、とにかく迫力があります。4×5判のカメラできちんと撮っていて、色彩の使い方も上手だと思います」
「さまざまな国で撮られていますが、私たちがイメージする固有の風景や地域性がどんどんなくなっている気がして、そこが面白いですね」
「違う土地なのに同じ風景がいろんなところに出てきて、グローバル化の実態を頭では理解していても、こうして見せられると本当にそうなんだなと実感させられます」

すでに世界が均質化してきているという、その兆候を捉えた映像でしょうか。

「確かに“グローバル化”や“均質性”などが最初に見たときには目立ってくるけれど、ディテールまできちんと写っているから、よく見ていくと、やはり地域的な文化も見えてきますよね」
「それが写真というメディアのありがたいところですね。写真を見て、タイトルを見て、さらに細かく見ていくと地域性がやっと見えてくるという、そういう面白さもあります」


池上洋平「対馬漂景」

長崎県の対馬で撮影し、モノクロで丁寧にプリントされた作品です。とてもオーソドックスな表現方法による写真ですが、

「プリントがとてもきれいで、オーソドックスな写真の強さを感じます。このような作風は鼻につく写真が多いんですけど、この作品はそういう部分がありませんね」
「現在の対馬というより、記憶の中の対馬という感じがします。それが、これだけ白黒写真で美しく焼かれていると、確かにどこかで見たような作品になることが多いんですが、この作品には風通しの良さを感じます」

作者が見つけたこの“世界”というのは、写真的な表現に限らず、日本独特のものなんでしょうか?

「60年代~70年代あたりの撮り方を思い起こさせる写真ですよね。それが、どこか伝統的というか、日本独特のものだと感じさせるのではないでしょうか」
「それと、美しいプリントという点では、トーンで見せているところがあります。トーンが大きな魅力になっていて、語り口になっていると思います」
「そうですね。ハイライトと暗いところとの幅が狭いから、見る側に映画を暗い室内で見せるような、たとえばスクリーンに集中させるような効果が生まれているんじゃないでしょうか」


奥村久美子「花椿」

居住者が去った一軒の家を作者が訪ねて行き、その室内を撮影した作品です。しんみりとしてくる写真で、しかも古い家屋がとても美しく感じられます。

「人が不在になると、時間の経過によってその空間は少し変わるんでしょうか。具体的に物理的に何が変わるというのではなく、空気が変わってくるというか。それを捉えている作品だと思います」

たとえば応募作品に多いのは、部屋があって、そこに居住者がひとりポツンと写っているような写真がひとつの典型としてあると思うんですが、ここには人物がいませんよね。

「人物がいないことで、さらに私たちの目を引きつける写真になっているのかもしれないですね。そうした典型的な作品とは反対のアプローチだからこそ、心を引かれるのかもしれません」
「事実、この作品を見ていると、人物がいないほうが人間の存在について語っているみたいなところがありますよね」
「そうですね。こういう表現方法もあるのかと感心させられました」


關口寛人「babies」

共同生活されているお年寄りの方々に人形を持っていって、さまざまな障害の治療のひとつであるドールセラピーを捉えた作品です。

「こうした写真は、ひとつ間違えれば、とてもいやらしい写真になってしまうと思うんです。自分の作品のためにドールセラピーのような要素を持ち込んで、なかば利用しているような写真になりかねません。しかし、この作品はそういった意図的な部分を感じませんよね」
「本当の孫やひ孫だったらもっと自然に見えるところを、人形だからグロテスクになりかねないんですが、それがグロテスクに見えないですよね。とても優しい写真になっていると思います。もし、自分の写真のためだけに意図的に撮っていたとしたら、こういう感じには写らないでしょうね」

このプリントは周囲をわざと暗くしているんでしょうか。

「そうでしょうね。ちょうどスポットライトがやわらかく当たっているようなプリントにしているのも、この作品にふさわしい表現だと思います」
「テーマの捉え方から写真の表現方法まで、とても心引かれる視点からの作品ですね」


中野智文「Re:Shanghai」

上海の写真は、ここ数年たくさん発表されていますが、その中にあってもまた違う上海を見せてくれたという印象です。

「独特のユーモアがあって、表情など、ちょっとしたところに引かれる要素がありますね。生きていることのエッセンスというか、“おかしみ”みたいなものが写真の中に出ていると思います」

フォトジャーナリストとして活動されている作者ですが、普段の仕事とは明らかに趣の違う世界がここでは展開されていますよね。

「そうですね。さりげないし、数多くある上海の写真と具体的にどう違うかと問われたら、答えるのがむずかしいですが、やはり視点に独特のものを感じます」
「個人的な感想になりますが、いままで上海の写真を見て上海に行きたいと思ったことがないんです。でも、この作品を見ていると自分が行っても十分に溶け込める街なのかなと思えてきますね。親しみの持てる世界がここにあるなという印象です」
「拝見していて、途中まで大阪で撮った写真なのかなと思っていました。上海と大阪って少し似ていませんか?ユーモアや親しみが伝わってくるのは、そのせいかもしれません」


加瀬健太郎「子どもの宇宙」

子どもたちが組体操をしているシーンを撮った作品です。学校などで子どもを捉えた写真の中でも、ちょっと変わったタイプのものですね。

「その昔、ドイツで運動する肉体を撮った映画が流行ったことがあって、それを彷彿とさせるシーンが出てきたりしますが、最近には見ない写真ですよね」
「組体操のような考え方も現在のゆとり教育とはまったく反対の考え方ですし、子どもたちの組体操をテーマに選んで、こうしたタイトルを付けるというのも、かなり独特な視点を持っている方だと思います」

どこからか「ダル~い」という言葉が聞こえてきそうな感じがしますね(笑)

「規律を重んじた“組体操”的なイメージとは、全然次元の違うものだと思います」
「子どもたちの表情に、まったくと言っていいほど献身性がないですよね。もちろん献身性というのは精神性と言い換えてもいいと思うんですけど、どの子も“何かのために”という顔を全然していません」
「時代や国が違えば、こんな顔をしてやっていたら叱られますよね。でも、そこが真実なんだと思います。子どもだけど、人間の姿がちゃんと見えてくるから面白いですよね」


入賞者のご紹介へ戻る

ページトップへ戻る