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プレミオ通信

フォト・プレミオ 2009 入賞者

第1期展示入賞者
(11月末締切)
第2期展示入賞者
(2月末締切)
第3期展示入賞者
(5月末締切)
第4期展示入賞者
(8月末締切)
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FOTO PREMIO NEWS No.12

先日、「フォト・プレミオ2009」第4期締め切り分(2009年8月末)の選考会が行なわれ、総勢6名(2010年2月4名、3月2名)の方が新たに選出されました。今回の受賞者の作品はどのような点が評価されたのか、また、選考委員が作品を選んだポイントなど、選考会でのコメントをそれぞれの作品ごとにご紹介します。

安田菜津紀『「緑の壁」 HIVと共に生きる』

カンボジアのプノンペンに住んでいるHIVにかかってしまった人々、特に子どもが多いのですが、その彼らの生活の中に入っていって撮られた写真です。

「写真としてのクオリティはまだ発展途上ですが、この状況をきちんと人に知らせよう、世界に訴えよう、という意志に貫かれていて、とても貴重な写真だと思いました。写真の技術的な面を上達させるのはそれほどたいへんなことではないので、ぜひ今後もこのようなかたちで撮り続けてほしいと思います」
「HIV患者を特殊ではなく、自分の“隣の人”という感じに捉えていますよね。ジャーナリストがやりがちな、自分をちょっと上の立場に置いて“被害者”とか“かわいそうな人”という視線で撮るのではなく、隣にいる人にあいさつをするようなやさしい気持ちで撮っているんじゃないでしょうか」

物事を知っていくと偏見も偏見じゃなくなっていくという意味で、ひとつ進んだ視線なのかなと、作品を見ていて思いました。

「写真家の接し方や見方はもちろん、一般的な目という意味でも、こうした事態は接し方や見方が進歩することによって解決の糸口がつかめてくるんじゃないでしょうか。そんなことを感じさせる写真です」


髙木忠智「Post election conflict 混乱の爪跡」

大統領選挙の後、さまざまな混乱が生じているケニアを、大きな問題意識を持って撮られた作品です。

「プロフェッショナルな捉え方をした、ジャーナリスティックな写真です。さきほどのHIV患者を撮った作品をドキュメンタリーとするなら、この作品はフォトジャーナリストの王道の仕事のように見えます」
「こうした大きな問題を、フリーランスの写真家がたったひとりで撮るというのは、むずかしいことも多いと思うんです。そんな中でこの作者が苦闘し、格闘し、一生懸命になっているのが素晴らしい。彼は「新聞や雑誌では“何十万人”と数字で括られてしまうが、私はひとりひとりの人間と向き合っていきたい」というようなことを述べていますが、とても説得力のある言葉だと思います」

その通りですね。何千人が亡くなったとか、私たちはいつも数字で事態を理解させられていますよね。

「もちろん“数字”はひとつのデータとして大切な情報ではあるんでしょうけど、ひとりの写真家としてできることはそれ以外のところにもあるわけです。それをこの作者から教えていただいたような気がしました」


内田芳信「パイカジ」

沖縄を本島と離島も含めて撮られたそうで、沖縄というテーマはこれまでもフォト・プレミオで何度か紹介されていますが、今回の作品の魅力は何でしょうか?

「沖縄の人が撮った沖縄じゃないとでも言いましょうか、そこが魅力ですね。土着の沖縄というイメージをあまり探してないというか、ふつうにカメラを向けて、ふつうに“ああ、気持ちいい!”と言って撮っているような気がします」
「だから、あまり沖縄写真という感じがしませんよね」
「たとえば大阪から発信される写真だと、大阪の外で受け取られやすい大阪を見せようとすると思うんです。大阪っぽい写真、大阪を強調してくる写真が多いですよね。沖縄の写真にもそういう部分があるんですけど、この作品にはそれがあまり見られないんです」

素直に正面から撮っている写真だと思います。

「沖縄や大阪を主題にした写真は、最後には人間の強かさだとか、しぶとさだとか、生命力というところに結びつけられるような撮り方をしているのが多いですね。この作品にはそういうところがなくて、新鮮に映りました」


仲尾政弥「日和」

優しい日本語のタイトルが付いている作品です。

「“草食系男子”って言うのかな。こういう優しい眼差しって、最近の若い男の子に多いと思います」
「視線が遠いんですよね。クローズアップせずに、意図的に引いて対象を撮っているんだと思います。その辺が優しさを感じさせることにつながっているのかな。引いて撮るというのは、世界的に若い写真家たちの傾向でしょうね」
「たとえばジャーナリストの人たちなら、自分の写真の意味を、近づくことによって得ようとしますよね。しかし、この作者は逆に遠ざかることによって自分の表現をつくっているんだと思います。そういう意味では、とても意識的に撮られた写真であるし、優しい眼差しなんだけど、ちゃんとひとつひとつに意志があるという気がします」

願望があるんでしょうね。作品に表現されているのは、“こうあってほしい”という理想的な日常なんだと思います。

「こういう時代に環境がどんどんハードになってくると、競争的じゃなく、毎日淡々と幸せにいられたらと思うような、そういう生き方をしたくなってくるんじゃないかな。"草食系"という言葉が流行っているひとつの所以でもありますね」


南 しずか「MINAMI+Carnival」

トリニダード・トバゴというベネズエラの隣の島国のカーニバルです。カラフルでエキサイティングな光景が展開する作品です。

「若い女性の元気さはこのカーニバルの写真のような方向に向かい、男の子の静けさとか優しさは先ほどの作者のような傾向になっているという、まさに現在の典型的な状況を感じます」

本当にこんなお祭りがあるのかと、日本に住んでいる者としては思ってしまうんですけど。

「人生を楽しまずにはおかないぞ、という覚悟を持って祭りを楽しむという、このラテン的な在り方っていいですよね。写真からそれがよく伝わってきます」
「独特の華やかさというんでしょうか、もちろん意図して作られたイベントですが、自然発生的な祭りになっていますよね」
「ブラジルの有名なサンバカーニバルなどは規模が大きくなりすぎていて、会社にたとえるなら大企業がやっているようなものですけど、ここのカーニバルは村がやっているような、とても親しみが持てる祭りという感じで、見ていてうれしくなります」


斉藤麻子「Exposures」

いままでフォト・プレミオではこういう写真は展開されていなかったと思うんですが、野外において地層や岩石が露出している場所(露頭=Exposures)、大地の割れ目や裂け目を撮った写真です。

「時間をかけて丁寧に撮っていますよね。専門知識もあって、ひとつひとつの断層がどういう時期にできたのかというところまで考えながら撮っていますし。視覚的な楽しさと、科学的な面白さというのが、2つ備わっていると思います」
「この作品を見て、以前開催された柴田敏雄さんの写真展を思い浮かべました。そのときも、写真としてのクオリティを保った作品でありながら、通常の写真展には来ないような土木やダムなどの専門家の方々がすごく関心を持って来られたということがありました。学術的な側面と美的な側面を両立しているというところが、こうした作品の面白さでしょうね」

自ら知識を持ってしっかりと科学的に撮っているというところが、作品のクオリティにつながっているのでしょうか。

「科学的な目できちんと撮っているし、地層のような現象って必ず合理性を兼ね備えているので、写真的にも美しくなるんだと思います」


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