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基準太陽電池セル - 基準太陽電池セルが必要とされている理由 -

地上用の太陽電池については、1SUN(AM1.5G、1000W/m2)条件において、太陽電池に入った太陽エネルギーと太陽電池からの電気出力の比を%で表したものを変換効率と定義されています。この値が製造メーカーのカタログ値や学会で発表される値となります。
したがって、基準となる条件・環境を整える必要があります。基準太陽電池セルは、特別に校正された測定器で、太陽電池の性能を測定するためのソーラーシミュレーターの光量調整用として使用されます。

基準太陽電池

IEC60904-2「Requirements for reference solar devices」やJIS C8904-2「太陽電池デバイス-基準太陽電池デバイスに対する要求事項」の中に基準太陽電池セルについて定義付けされています。
変換効率を求めるにあたり短絡電流値(Isc)が定まれば、I-V曲線(セクション「I-V測定」参照)から電圧-電流特性は求められます。(市販の計算ソフトを使用することで、変換効率は自動的に計算が可能です。)
変換効率を求める上で大切なのは、正確なIscを設定することにあります。したがって、国際規格では正確なIscが得られている基準太陽電池セルを定義しております。
基準太陽電池セルには以下のように区分けがされております。

一次基準太陽電池セル
SI単位にトレーサブルな放射計、標準検出器、又は標準光源に基づいて校正された太陽電池セル

二次基準太陽電池セル
一次基準太陽電池セルを基準として太陽光、又はソーラーシミュレーターで校正した太陽電池セル

ワーキング太陽電池セル
二次基準太陽電池セルを基準として太陽光、又はソーラーシミュレーターで校正した太陽電池セル

一般的には研究開発において、光量調整用として使用される場合には二次基準太陽電池セルまたはワーキング太陽電池セルが適しております。コニカミノルタでは、産業技術総合研究所(産総研)と共同研究を行い、産総研の二次基準にトレーサブルな各種擬似基準太陽電池セルを取り扱っております。

この擬似基準太陽電池セルは結晶シリコンにフィルターを組み合わせることで、7種の太陽電池セルのタイプに対応した擬似基準太陽電池セルを取り揃えております。

『擬似』となっているのは、結晶シリコンタイプを除き、フィルターを使用することで、各タイプの分光感度に近似させておりますので、『擬似』という言葉を使用しております。以下、基準太陽電池セルと擬似基準太陽電池セルを併せて『基準セル』と呼びます。

基準セルの選択にあたり、被測定太陽電池(評価サンプル)の分光感度に近い分光感度を持った基準セルを選択する必要があります。その理由を図1~図2のグラフを使って説明します。
例えば、アモルファスシリコン(α-Si)とマイクロシリコン(μ-Si)のI-V特性を測定する際、結晶シリコン(c-Si)型の基準セルを使ってソーラーシミュレーターを調整した場合を考えます。(図1)
AM1.5Gに対してソーラーシミュレーターの光量は、α-Siの分光感度が大きい350~600nm においては放射エネルギーが大きいので、ソーラーシミュレーターの光量が11.8% 大きく調整されてしまいます。一方、μ-Siの分光感度が大きな700~900nmでは、ソーラーシミュレーターの光量が基準太陽光より少ないので、光量が6.4% 小さく調整されてまいます。これらの誤差は、測定時のソーラーシミュレーターの光量がJIS、IEC規格で規定された方法で調整されていないので、発電量の測定誤差になってしまいます。
また、α-SiのI-V特性を測定するためのc-Si型の基準セルを用いて分光放射照度の異なるA社、B社のソーラーシミュレーターの光量を調整した場合を図2を使って説明します。350~700nm の領域においては、A社の光量が大きくなっています。この結果、A社のソーラーシミュレーターで測定するとB社より大きな発電量になってしまいます。
ソーラーシミュレーターの分光放射照度が基準太陽光と完全に一致していれば、このような問題は発生しないのですが、実際のソーラーシミュレーターの分光放射照度を、完全に一致させることは、非常に困難なため、JIS、IEC規格は基準セル方式を採用してこの誤差を削減する方法を推奨しています。

C-Si(結晶シリコン)用リファレンスセルとα-Si(アモルファス)、μ-Si(マイクロシリコン)型の分光感度 図1:c-Si(結晶シリコン)用基準セルとα-Si(アモルファス)、μ-Si(マイクロシリコン)型の分光感度

アモルファスシリコン型の分光感度とA,B2社のソーラーシミュレーターの分光放射照度スペクトル 図2:アモルファスシリコン型の分光感度とA,B2社のソーラーシミュレーターの分光放射照度スペクトル

JIS、IEC規格では、上述の誤差を削減する方法としまして、スペクトルミスマッチ誤差補正という考え方を採用しています。スペクトルミスマッチ誤差(MM)は以下の式で表されます。

スペクトルミスマッチ誤差補正

Eref(λ) :基準太陽光の分光放射照度
Emes(λ) :ソーラーシミュレーターの分光放射照度
Sref(λ) :基準太陽電池(基準セル)の分光感度
Smes(λ) :被測定太陽電池の分光感度

2011年にJIS C8904-7でスペクトルミスマッチ補正の計算法が規定されました(『太陽電池測定でのスペクトルミスマッチ補正の計算方法』)。詳細はそちらをご覧下さい。
コニカミノルタではスペクトルミスマッチ計算ソフトを提供しております。

このソフトを使用することで測定サンプルのIscを求めることが出来る上、精度の高い変換効率を求めることができます。
上記の計算式では4つのパラメーターでスペクトルミスマッチ誤差が決まります。このことから偶然的にMM値が低くなることも考えられます。

例えば、基準セルα-Si型を使い、被測定太陽電池サンプルにμ-Siを用いた場合、ソーラーシミュレーターのスペクトルが変わると極端にMM値が変わります。(図3、図4)
A社のソーラーシミュレーターを用いて測定した際のMM値は0.5%ですが、同じ基準セル、被測定サンプルを用いてB社のソーラーシミュレーターで評価した場合、MM値は-9.1%となりました。これは、最適な評価環境に無いことを意味しています。
したがって、正確な値を出すためには、基準セルの分光感度が評価する太陽電池の分光感度に近似していることが必要なのです。
コニカミノルタでは、太陽電池の材質・種類に応じて合計7種類の異なる分光感度に対応した基準セル(AKシリーズ)をご用意しております。
尚、テュフラインランドジャパンにおいて、2012年12月現在、コニカミノルタ基準セル、AK-100/110/200/300の二次基準校正が可能となりました。

A社ソーラーシミュレーターの分光放射スペクトルと基準セルの分光感度(赤線) 図3:A社ソーラーシミュレーターの分光放射スペクトルと基準セルの分光感度(赤線)
及び測定サンプルの分光感度(黒線)

B社ソーラーシミュレーターの分光放射スペクトルと基準セルの分光感度(赤線) 図4:B社ソーラーシミュレーターの分光放射スペクトルと基準セルの分光感度(赤線)
及び測定サンプルの分光感度(黒線)

  • 基準セルは測定サンプルの分光感度と近似しているタイプを用いることが重要です。
  • 正確なIsc値を得るには、スペクトルミスマッチ誤差の補正をする必要があります。

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