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メディカルネットワーク
No.265 No.2-2004
21世紀、世の中様変わり

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21世紀、世の中様変わり

Konica Minolta Medical Network No.265 No.2-2004

岡崎 正敏

岡崎 正敏
福岡大学医学部放射線医学教室
教授

世の中、激動の21世紀に突入した感がある。

全世界に拡がるテロ行為、終わりの見えないイラク戦争、北朝鮮の拉致被害問題、など種々様々であるが、何れの問題も日本は深い関わりを持っている。

宗教の違いからくる紛争のすさまじさは、殆ど信仰心のない私如きには理解することができない難問である。

内に目を向けると、年金問題、イラク戦争や北朝鮮への対応、景気の動向、お役人の公金無駄使い、参議院選挙などが新聞の一面を飾っているが、我々、日本国民の健康維持の一翼を担っている医師にとっても、種々の難問題が山積みされてきている。

2003年に導入された包括医療制度は大学病院勤務の筆者ら放射線科医に難問を突きつけた。すなわち、本制度はある疾患で入院された患者様の入院期間中の費用は前もって決定されている。したがって、病院収入の面からみると、出来るだけ入院前に画像診断を含めた術前検査を終了することが推奨される制度である。なお、手術、Interventional radiology(IVR)や放射線治療などの治療とX線画像診断やMRIを除いた一部の画像診断(内視鏡検査、心カテなど)は出来高制とし、包括会計とは別会計として取り扱われるものである。

その結果、CT、MRI、RIなどの画像診断を外来レベルで施行する必要性が増加した。ただでさえ、依頼から検査までの待ち時間の長かった、これらの画像診断の早期施行が急務となった。

従来は検査を施行していなかった時間帯の利用や高速CTの導入で対応してはいるものの、診療放射線技師、看護師、放射線科医師の増員はなく、仕事量は増加の一途をたどっている。さらに、放射線科医を苦境に陥らせる新しい卒後研修医制度が2004年から導入された。本制度は医師国家試験合格後の2年間は基本科目(内科、外科、救急部門、各3ヶ月以上)及び必修科目(精神科、産婦人科、小児科、地域保健・医療、各1ヶ月以上)のローテーションを原則としており、研修医の放射線科での研修は限られたものとなっている。CT、MRI、RI検査などでの血管確保、薬物注入、検査時患者観察、画像チェックなどの業務を初め、貴重な戦力の減少となっている。日本医学放射線学会(日医放学会)としての新研修医制度への早急な対応が切望される。

以上、放射線科医にとってネガティブな事項の一部を述べたが、次に悲しくも明るい話題について触れることとする。

近年、日本医学放射線学会の広報活動は極めて活発となり、学会の動向はホームページに公開されている。ホームページを利用して積極的に学会に意見を述べてらっしゃる熱心な学会員、一般市民の方々も多数見受けられる。なかでも特筆すべきは従来の医局講座単位の意見から一個人からの建設的意見も目立ってきていることである。開かれた学会へと変身し、改革が着実に進んでいるようである。さらに、5月から学会事務局も移転新設され、同所での会議開催も可能となり活発な学会活動の発信地となるはずである。学会改革に心血を注がれ、倒れられた故板井悠二総務理事を初め、遠藤啓吾現理事長、西谷 弘広報担当理事等、関係各位の御努力に敬意を表する次第である。板井教授の御冥福をお祈りすると共に天国からも、唇をすこし尖らせながら苦言を呈し続けていただくことを熱望してやまない。

日医放学会のこれらの動きと並行して、日本医学放射線専門医会・医会の地道で活発な活動も目を見はるものがある。その一部を紹介してみたい。夏と冬に同会が年2回主催するミッドサマーセミナー、冬季セミナー(日医放学会と共催)はいつも会場は超満員で、充実した講義内容と熱気溢れる質疑応答が繰り拡げられている。専門医試験の受験に最も役立つセミナーであるとの評判も高い。2~3年先まで見据えた企画、演者の選択などを考慮したセミナー運営には頭の下がる思いである。なお、この夏はJCR Midsummer Seminar 2004 in Kobe“苦手克服ステップアップのためのミッドサマーセミナー”と銘打って7月31日、8月1日に神戸ポートピアホテルで開催予定である。本セミナー開催企画、運営の中心人物である早川克己先生が今回は世話人をされており、乳幼児同伴でも参加可能な保育サービスシステムの心遣いまでなされている。

さらに、同医会は“放射線科専門医におまかせください”のタイトルのパンフレットを作成し、全国の患者様に対し放射線科の紹介を行い啓蒙運動を開始した。中島同会理事長の発案で作られた小パンフレットで、検査、読影、診察、画像、治療などの風景も掲載されており、全国の施設で是非利用されるべき紹介パンフレットと考える。

最後に筆者が現在最も関わりあいの強いIVR関連について述べる。IVRはこの20年間、放射線分野の中で最も進歩、普及してきた領域であるが、 IVRはこの数年“きつい、汚い、危険”の3Kのため(?)か“どこでも、いつでも、患者様と接することなく施行可能”な遠隔画像診断などに若手放射線科の興味はとられがちである。しかしながら学会員数も1,734名に増加し、IVRというJapanese Englishが保健制度の治療法として採用され、なおかつ手術と同等の治療手技として認定されたことは画期的出来事といえる。さらに、IVR学会の指導医試験も2回実施され、374名の指導医が誕生し、各種のIVRワーキンググループも立ち上がりつつある。

奇人、変人が多いとされる本学会員(小泉某氏のように無責任なひとは少ないと筆者は信じている)、E-mailを介して自由闊達な意見が行き交っているが、時間などの問題もあり、中途半端な討論に終わっている。近い将来、前もって議題を決めたエンドレスに近い時間をとったIVRの自由討論会を開催し更なる飛躍を遂げたいものである。

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