Production Print Systems
ハンド氏はデスクに散乱した書類を見つめていました。彼の会社はメリーランド州・バルチモアにある中規模の印刷会社です。製品のパッケージデザインや、さまざまなテクスチャーの紙、エンボスや銀箔といった装飾など、販促ツール制作に役立つ自社技術の向上に力を注いでいます。なかでも仕事の出来を大きく左右するのは、使用している印刷機の性能です。
ハンド氏は、食品・飲料のグローバル企業からプロスポーツチームまでさまざまな顧客を抱えています。最新のデジタル印刷機のおかげで、あらゆるものの印刷に携われるこの仕事にやりがいを感じています。
子どものおもちゃから最先端のファッションに至るまで、3Dプリンターの幅広い分野での活用が大々的に報道されている一方で、これまでデジタル印刷に対しては人々が関心を向けることはありませんでした。しかし、デジタル印刷の技術も日々進歩しており、多くの人の働き方に変化をもたらしているのです。
ハンド氏は、Instagramのユーザーや自費で書籍を出版する人たちからも注文を受けています。Instagramのユーザーはアプリから直接写真を送り、オリジナルのマグネットからフォトブック、カレンダーまで、さまざまな印刷物を自分で作ることができます。
また、最近では、必ずしも小説家は大手出版社を通して印刷を依頼する必要がなくなりました。作家は原稿をメールで送り、指定した装丁を施した本を、必要な数だけ印刷することができます。デジタルテクノロジーの進歩によって、これまで商業用であった高品質な印刷機も、消費者にとって身近なものになりました。もしかするとあなたが書いた最初の小説も、地元の小さな印刷会社で産声を上げることになるかもしれません。
今までよりも小さくて手ごろなデジタル印刷機を使用することで、個人経営の印刷店、大学の出版部、そしてハンド氏のように小ロットの依頼も受けることができる印刷会社など、新しいビジネスのチャンスが生み出されているのです。
1970年代から80年代にかけて一般的に使用されていたドットインパクト方式*1の印刷機から、デジタル印刷機へと移り変わっておよそ30年。デジタル印刷機は今も進化を続けています。版は、パソコン上で作成ができるデータに置き換わり、印刷業者は制作期間やコストの管理がしやすくなりました。
印刷コストの削減、印刷対象物の広がりによって、消費者と印刷物の関わり方や、印刷業界のスタンダードは大きく変わってきています。
「以前のデジタル印刷機は、版を使用するオフセット印刷の精度には全く及びませんでした。しかし、今は違います」と、ハンド氏は話します。また彼は、デジタル印刷機で文書をスキャンしサーバーに保存することで、オフィスにある紙類の山をなくすことにも成功しています。
パッケージラベルなどの商用製品の平均印刷数はかつて10,000部~100,000部でしたが、ユーザーごとにカスタマイズされ、制作期間も短縮されたことに伴い、今では平均印刷数は5,000部以下になりました。小ロットの印刷によって顧客のニーズに柔軟に応えていくことが、新しいデジタル印刷事業の特徴となっています。デジタル印刷機を導入した結果、印刷に関連するさまざまな工程は自動化され、生産効率を向上させているのです。
*1 ドットインパクト方式
数枚綴りの複写式の帳票用紙に、印字ヘッドの圧力で印刷する方式の印刷機。印字スピードが遅い、動作音が大きい、解像度が低いという欠点があります。
印刷の効率を上げるデジタル印刷機の1つがコニカミノルタのAccurio Jet KM-1です。オフセット印刷と同等の高精細な印刷物を、小ロットで提供することができ、ジョブ管理・編集を行うことのできるビジョンパネル、紙を自動で移動させるロボットグリッパーを本体に装備しています。また、すぐに乾く特殊なインクを使用しているため、印刷物を乾かす時間を短縮させています。さらに大きなメリットとしては、B2サイズの印刷が可能になったことです。
Accurio Jet KM-1によって、オンデマンドでの販促ツールの制作期間は短くなります。また品質の面でも、より精細で高級感のある画質になっただけでなく、ラベルや装飾印刷と連携し、ワインのボトルに施すような箔押しや凝ったレタリングも可能となります。
印刷業界で45年間、電気部品メーカーや食品メーカー、物流会社やセールスプロモーション担当者にラベルサービスを提供してきた日本の印刷会社は、コニカミノルタのラベル印刷機を導入し、近年受注数を伸ばしています。
同社は、デジタルラベル印刷機の導入によって、版を外注する手間が省かれ、厳しい納期にも対応ができるようになりました。デジタル印刷機によって、これまでの伝統的な印刷会社が、デジタル市場でも活躍ができる会社へと変わっています。オフセット印刷のクオリティを維持しつつ、顧客が必要なものを、必要な時に提供できる。それがデジタル印刷機の最大の特徴になります。
そして、デジタル印刷機が本領を発揮する場面としては、サプライヤーや法規制が変わる毎に、成分等の表示を変更する必要がある、製品のパッケージやラベルの印刷です。また、消費者は、製品のパッケージやラベルの見た目で購入意思を決める傾向が強いため、彼らの求める形に合わせて、パッケージデザインやテクスチャーを調整し、製品の販売数向上に寄与することができます。
必要なものを必要な人へ、
想いをカタチに。
Giving Shape to Ideas