SOLUTION

High Sensitive Tissue Testing

がん細胞のタンパク質を検出する
ナノテクノロジー

1がん細胞に発現する
タンパク質を可視化する

ナノテクノロジーを用いた診断技術は、
がんの治療や新薬の開発を進歩させる可能性を秘めている

「あなたの病気は、がんです。」
2030年までには、全世界で年間2,100万人以上の人が医師からがんの宣告を受けることになると言われています。米国がん協会によると、がんの患者数は2008年の2倍近くになり、がんの効果的な診断技術と治療法は、これまで以上に必要とされることになるでしょう。

がんは身体の広範囲に広がる複雑な病気であり、簡単で効果的な治療法は未だ確立されていません。化学療法などの従来の治療法では、化学物質でがん細胞を攻撃しますが、同時に健康な細胞にも損傷を与えてしまうため、脱毛、免疫機能の低下、消化管の炎症などの副作用をもたらします。

世界中の医師が過去20年に渡り、分子レベルでがんを標的とし攻撃をする治療法を模索してきました。がん細胞に発現するタンパク質にだけピンポイントに投薬できるようになれば、患者に与える副作用を軽減し、苦痛を和らげながら回復に向かわせることができます。ひとつの例として、細胞内の特定のタンパク質と結合するモノクローナル抗体が挙げられます。アメリカでは、1997年にモノクローナル抗体薬ががん治療に取り入れられて以降、非ホジキンリンパ腫による死亡率が低下しています。

がん細胞をピンポイントで攻撃する治療法を成立させるためには、患者から採取した組織を解析し、どのようなタンパク質が存在しているのかを正確に把握する必要があります。それによって得られた解析結果をもとに、医師はがん細胞に発現しているタンパク質に対して最適な薬を処方することができるのです。一般的な病理検査で用いられている「免疫染色」と呼ばれる技術は、タンパク質といった有機化合物を頼りに細胞を色付けします。この技術によって、医師は検体にがん細胞に発現するタンパク質が存在しているか、また、がんがどの程度広まっているのかを確認することができるのです。

2蛍光ナノ粒子を活用した
がん細胞の計測技術

従来の免疫染色と比べて、コニカミノルタが開発した新しい手法では、がんの進行具合を表す画像を今までよりも高い精度で撮像ができるようになります。これにより、がん細胞の存在の有無だけでなく、がん細胞に発現したタンパク質の位置や数も正確に検出することが可能になったのです。

がん細胞を光らせることで位置や数を把握する技術は、HSTT(High Sensitive Tissue Testing)と呼ばれ、東北大学の大内憲明教授、権田幸祐教授と共同研究開発を行っています。そこにはコニカミノルタが長年培ってきたイメージングのノウハウが活用されています。

HSTTでは、かつて写真用フィルムに使用されていた感光化学物質であるハロゲン化銀粒子を作る技術を応用した、「蛍光ナノ粒子(PIDs = Phosphor Integrated Dots)」という極小の粒子をタンパク質に付着させ、発光させます。

わずか数十nmの蛍光ナノ粒子は、特定の抗原に吸着する抗体を介することで、検出したいタンパク質とのみ結合し、正確に検出することができます。

蛍光ナノ粒子は従来の蛍光物質と比べ3万倍の明るさがあるため、とても小さな輝点として、採取した組織内のタンパク質を明確に色分けします。また、蛍光ナノ粒子によって発光した組織を蛍光顕微鏡で撮像し、特殊なソフトウェアを用いてデジタル処理を施すと、がん細胞の数を計測することができます。さらに、この情報を解析すると、採取した組織内に存在するがんの種類の検出や最適な治療方針の策定ができるようになるのです。

「HSTTは従来法と比較し高感度であることに加えて、がん細胞に発現したタンパク質の位置や数、強度を解析し、数値に置き換えることができます。また多重染色により、リンパ球などとの位置関係の把握も容易にします。HSTTにより治療効果予測ができるようになると、がん治療における大きなブレイクスルーに繋がると期待しています。」と、関西医科大学講師の柳本泰明氏は述べています。

3新しいがん治療の研究

道のりは長いですが、HSTTを使った治療は、がんの診断と治療に変革をもたらす可能性を秘めています。早期診断と共に効果的な治療法が開発され、ひとりひとりの患者に最適化された医療を提供することを目指します。コニカミノルタは製薬会社や医療機関と連携し、臨床試験を通じてHSTTの有効性の実証に取り組んでいます。

またHSTTは、採取した組織に適用させるだけでなく、生体内にも適用させることによって、より進化させることができます。現在コニカミノルタは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による日仏連携の国際共同研究開発・実証事業の資金援助を受けており、フランスのパスツール研究所およびイメージング技術関連のバイオアキシャル社とは、マウス体内の蛍光ナノ粒子を追跡記録するための観察システムを開発しています。これにより、蛍光ナノ粒子と共に使用される薬がどのようにターゲットとした細胞に影響を与えていくのかを観察することができ、新薬開発をスピードアップさせることにつながります。このナノスケールの生体内観察によって、新薬開発における臨床試験の時間・コストを削減することができ、大きなビジネスチャンスにつながることが期待されています。

「私たちは創薬、治験分野にこの技術を提供していますが、将来的には、機能造影などによる検査、診断事業を推進していきたいと考えています」と、常務執行役の腰塚國博は話します。最終的には、より一層高度な診断結果を提供するために、定量的なタンパク質データとその他の医学的情報との統合を目指しています。

4未来を見据えて

HSTTは、現場で可視化された大量のデータを収集し処理することができる、「サイバーフィジカルシステム」の実現を目指した取り組みです。HSTTに関して、コニカミノルタはがん細胞検査のための蛍光ナノ粒子自体ではなく製薬会社や医療機関から検体や預かり、タンパク質の量の測定と解析結果を提供するサービスとして展開する予定です。

コニカミノルタは創薬、治験分野を通じて、社会に貢献していきたいと強く望んでいます。そのため、アナログ写真技術を通して培ってきた技術であるファインケミカルや粒子合成のノウハウと、ディープラーニングやタンパク質の可視化技術を組み合わせることで、HSTTの開発を発展させていきます。

医療の発展を支える、想いをカタチに。

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