サーマルカメラの仕組みとその導入メリット
- #業務改善・生産性向上
- #働きやすい環境づくり

INDEX
サーマルカメラの仕組みと技術的特徴
近年、工場や商業施設における火災リスクがますます注目されており、その中で「サーマルカメラ」の導入が進んでいます。この背景には、火災予防や設備管理の重要性が高まる一方で、従来の火災検知技術では対応しきれない課題が浮き彫りになっていることがあります。
たとえば、リチウムイオン電池を取り扱う施設では、熱暴走による発火リスクが顕著です。こうした火災は一度発生すると広範囲に被害を及ぼすため、早期発見が何よりも重要です。また、高温作業を伴う工場では、設備の温度異常が製品の品質低下や生産ラインの停止につながる可能性があり、監視の必要性が高まっています。
サーマルカメラは、これらのリスクに対して大きな効果を発揮します。この技術は、物体から放射される遠赤外線を検知し、温度を可視化するもので、異常な温度変化をリアルタイムで監視することが可能です。従来の感知器とは異なり、煙や炎の発生を待たずに火災の兆候を捉えることができるため、未然に対応を取ることができます。
さらに、サーマルカメラの活用は、防災に限らず設備管理の効率化にもつながります。たとえば、配電盤や機械設備の異常加熱を早期に発見することで、予知保全の精度が向上し、コスト削減や生産性向上にも寄与します。
火災予防と設備管理が企業の安全性を確保し、持続可能な成長を支える柱となる中、サーマルカメラはその実現を強力にサポートする存在です。今後、さらに多くの業界で導入が進むことが期待されます。
サーマルカメラの仕組みと技術的特徴

サーマルカメラは、物体から放射される遠赤外線を検知し、それを温度情報として可視化する装置です。遠赤外線とは、物体が持つ熱エネルギーが放射される電磁波の一種で、視覚では確認できません。この性質を活用し、目に見えない温度分布を「画像」として表示できるのがサーマルカメラの特長です。
センサー技術の種類と特徴
サーマルカメラに搭載されるセンサーは主に以下の2種類に分けられます。
-
熱型センサー(非冷却型)
-
量子型センサー(冷却型)
赤外線のエネルギーを吸収し、温度変化を電気信号に変換します。小型でコストを抑えやすく、メンテナンスが容易なため、多くの産業現場で広く採用されています。
赤外線を直接量子エネルギーに変換する仕組みを持ち、高感度かつ高速での応答が可能です。精密さが求められる研究や医療分野、航空宇宙産業などで利用されています。
これらのセンサーの性能を最大限に引き出すためには、温度補正や環境光の影響を考慮した調整が不可欠です。
従来技術との違い:温度監視における面での可視化
従来の温度計測技術は、点や線での測定が主流でした。一方で、サーマルカメラは温度分布を「面」で可視化するため、広範囲の異常を一度に把握することが可能です。例えば、広い倉庫内や大型工場の設備全体を効率よく監視することができ、火災リスクの早期発見に大きく貢献します。
技術応用の広がり
サーマルカメラの活用は、火災予防にとどまりません。工場の設備点検、物流拠点での温度管理、医療機器の診断など、さまざまな分野でその可能性が拡大しています。また、AI技術やIoTとの連携により、データのリアルタイム分析や遠隔監視が実現され、さらに効率的な運用が可能になっています。
従来技術との比較:サーマルカメラの優位性

非接触性による安全性と柔軟性
火災予防の観点から、サーマルカメラは非接触で温度を計測できる技術を備えており、安全性と柔軟性の点で従来の火災検知技術を大きく上回ります。煙感知器や熱感知器は、異常の発生を検知するまでに物理的な接触や一定の環境条件を必要とする場合がありますが、サーマルカメラは遠赤外線を検知することで、離れた場所からも異常温度を正確に捉えることが可能です。
広範囲かつ精密な監視
サーマルカメラは、一台で画角90°の広範囲をカバーできます。これにより、広大な工場や倉庫でも効率的な温度監視が可能となります。一方、煙感知器や熱感知器は、限られたエリアしかカバーできず、広範囲を監視するためには多くの機器を設置する必要があります。また、炎検知器も広い距離で炎を検出できますが、温度変化を可視化することはできません。
早期発見能力の優位性
火災予防において重要なのは「早期発見」です。サーマルカメラは温度異常を即座に検知するため、煙や炎が発生する前の段階で火災リスクを特定できます。これに対し、煙感知器は煙が届くまでに時間がかかる場合があり、換気設備の影響で煙が拡散してしまうケースもあります。炎検知器は炎の発生を0.5秒以内に検知する高感度を持つものの、炎がすでに発生している状態での対応に限られます。
誤報の少なさ
従来の煙感知器や熱感知器では、誤報が多いことが課題として挙げられます。例えば、煙感知器は調理やたばこの煙などに反応してしまう場合があります。一方で、サーマルカメラは環境条件に強く、誤報を最小限に抑える設計となっています。
技術の進化と未来の可能性
サーマルカメラは、AIやIoT技術との連携により、さらに高い精度での温度監視が可能です。例えば、AIが温度データをリアルタイムで解析し、異常箇所を即座に特定して警告を発する仕組みが構築されています。このような技術進化により、工場安全の向上に寄与し、従来技術を補完する形でさらに多様な分野への応用が期待されています。
サーマルカメラの導入メリット

火災リスクの低減
サーマルカメラの最大のメリットは、火災予防における効果です。温度異常をリアルタイムで監視することで、煙や炎が発生する前に異常を検知できます。これにより、施設管理者は早期に対応し、火災リスクの拡大を未然に防ぐことが可能です。特に工場安全の観点から、高温作業エリアや設備の温度監視において、その効果を発揮します。
IoT技術との連携
サーマルカメラは、IoT技術との連携によってさらなる価値を生み出します。カメラ単体でアラーム発呼の温度条件の設定が可能、単位時間あたりの温度変化を条件にすることも可能です。また、遠隔地からのモニタリングが可能になるため、監視体制の効率化と柔軟性が向上します。
設備メンテナンスの効率化
サーマルカメラは、設備の異常や劣化を早期に発見することで、予知保全を可能にします。従来のメンテナンスでは、目視点検や手動測定が主流で、異常を見逃すリスクがありました。しかし、サーマルカメラを導入することで、温度変化を「面」で監視でき、異常箇所を迅速かつ正確に特定することが可能です。これにより、突発的な修理の必要性が減少し、長期的なコスト削減が期待されます。
導入コストの抑制と長期的なリターン
初期導入コストが懸念される場合でも、長期的な視点で見るとサーマルカメラは大きなリターンをもたらします。設備トラブルによる生産停止や火災発生時の被害コストを考慮すると、早期発見と予防保全による効果は非常に大きいと言えます。
多用途性と拡張性
サーマルカメラの活用範囲は、火災予防だけにとどまりません。例えば、工場内の温度管理、物流倉庫での冷却装置の監視、さらには医療現場や農業分野での応用も進んでいます。これにより、企業は単一の目的だけでなく、複数の用途でサーマルカメラを活用し、さらなる効率化と付加価値の創出を実現できます。
実際の導入事例と成果
リチウムイオン電池関連施設での火災予防
リチウムイオン電池を扱う工場では、熱暴走による火災リスクが常に懸念されています。ある施設では、サーマルカメラによる監視システムを導入することで、設備全体の温度を「面」でリアルタイムに監視する仕組みを構築しました。その結果、異常温度が検知されるたびに早急な対応が取られ、火災予防に成功しました。このシステムは、安全性の向上だけでなく、従業員の安心感の向上にも寄与しています。
設備劣化の早期発見とトラブル回避
製造業の工場において、工場安全の観点からサーマルカメラが活用されました。焼却炉やキルンなどの設備の温度監視を常時モニタリングすることで、通常の点検では見つけにくい異常加熱を早期に発見できました。この結果、大規模なトラブルが未然に防がれ、操業停止のリスクが大幅に軽減されました。これにより、設備の寿命延長と予知保全の精度向上が実現しました。
操業効率向上の具体的成果
バイオマス発電所では、燃料貯蔵庫の温度をサーマルカメラで監視する仕組みを導入しました。このシステムは、異常温度が検出された際に即座に警告を発することで、自然発火による火災リスクを大幅に低減する効果を発揮しています。また、従来の手動の温度チェックと異なり、誰でもモニタを見ることで確認ができ、監視体制の効率化と業務負担の軽減にも貢献しています。さらに、消防法の観点からも高い評価を受けており、地域社会との信頼関係構築にも寄与しています。

導入の成功要因
これらの事例に共通する成功要因は、サーマルカメラが提供する「広範囲」「高精度」「リアルタイム」の監視能力です。さらに、AIやIoT技術との連携により、異常の自動検知やデータ分析が可能となり、企業のリスク管理を強化しています。これにより、安全性と効率性を両立した運用が実現しました。
企業成長を支えるサーマルカメラの可能性
火災予防の現場に変革をもたらす技術
サーマルカメラは、火災リスクを未然に防ぐだけでなく、広範囲にわたる温度監視を可能にする革新的な技術です。その特長は、従来の感知器が対応しきれなかった「早期検知」と「広範囲の監視能力」にあります。工場安全が求められる製造現場では、異常温度をリアルタイムで捉え、火災発生前の段階で迅速な対策を取ることが可能です。
安全性と効率性の両立
火災予防はもちろんのこと、サーマルカメラは設備管理の効率化にも大きく貢献します。たとえば、高温となる機械設備の異常加熱を早期に検知することで、トラブル発生を未然に防ぎます。これは火災予防条例や消防法が求める安全基準の遵守にも直結し、予期しないダウンタイムを削減し、メンテナンスにかかるコストを最小限に抑えることができます。
火災対策に不安をお持ちの方、予防対策の強化をご検討の方は、ぜひ下記の資料をご覧ください。 実際の導入事例を通じて、サーマルカメラによる火災予防の具体的な方法をご紹介しています。
コニカミノルタの火災予防ソリューション資料
本資料では以下の内容をご紹介しています。
- 国内の火災発生状況と工場・作業場での火災リスク
- サーマルカメラによる「面」での温度監視システム
- コンベアーや産廃処理施設などでの導入事例
