コニカミノルタのリアルなBtoBマーケ実践
ストーリー6:「リードの質」の考え方とリード施策の進め方解説編

  • #マーケティングの強化
  • #業務改善・生産性向上

コニカミノルタジャパンのマーケティングサービス事業部のマーケティングチームは2022年の4月で5年目を迎えました。

ほんの5年前、ほぼ何もない状態で3名でチームを立ち上げ、3年6ヶ月で創出した総パイプライン(売り上げ見込みの金額)の割合は25.6%UP。
チームメンバーも16名になり、成熟期を迎えようとしています。

とはいえ、ここまでの道のりはそうたやすいものではなく、試行錯誤の連続。悩んで、実践して、失敗して、またトライして・・・の繰り返しでここまでやってきました。

私たちのリアルな実践ストーリー第6回目はリードについてです。
一般的に見込み顧客のことをリードと呼びますが、企業によって定義が少し異なります。マーケティングに取り組む中で、リードの数や質について、頭を悩ませているマーケターの方も多いと思います。

今日はコニカミノルタの取り組みをベースに『リードが足りない』と悩んでいる皆様に向けて、リードの質の考え方とリード施策の進め方をお届けします。

目次

この記事は約11分で読めます

Section1:「リードが足りない!」って本当?

「リードが足りない」とはどういう状態か

マーケティング施策にとって、リードは非常に大切です。
「リードが足りない!」と日々頭を悩ませているマーケターの方は多いのではないかと思います。しかし、「リードが足りない」とはどういう状態なのか、正しく理解しているでしょうか?

「リードが足りない」とは、ターゲットとなる企業・リードが明確なうえで接点があるリードが少ない状態のこと。ターゲットとなる企業・リードが明確でないまま、ただ漠然と「リードが足りない」と考えるのは間違っています。

Section2:「リードの質」の考え方と進め方のステップ

リードを確認するステップ

ターゲットが明確になっていないなら、まずターゲットリードを確かめることからスタートする必要があります。

具体的には、次のようなステップを踏むことでターゲットリードを確認することができます。

それぞれの段階でどのようなことを行えばいいのか、詳しく解説します。

1.ターゲット企業の条件を決める

決め方

ターゲット企業の条件を決めるには、これまでの実績から分析し、仮説を立てて、抽出条件と選定を行います。まだ実績がない場合でも、何らかのデータから仮説を立て、抽出条件と選定を行うことに変わりはありません。

受注商談や有効商談(受注には至らなかったが良い商談ができた案件)からターゲット企業の条件を抽出し、売上高や資本金、従業員数レンジなどで区分けしてみて、ターゲット企業に自社の商品・サービスに対するどんなニーズがあるのかを言語化します。
そして、最終的にターゲット企業の条件を割り出し、そういった企業がハウスリストの中でいくつあるのか、企業名と企業数を抽出します。

ポイントは、条件に合致する「具体的な企業数と企業名を出す」ことです。この抽出作業を当社では、FORCASを利用しています。

FORCASは、ABMや営業の成果を高める150万社以上の企業データベースをもつB2B事業向け顧客戦略プラットフォームです。
エクセルで顧客リストをアップロードするだけで共通する特徴や傾向を自動的に分析することもできます。

ターゲットを決める上で大切なこと

ターゲット企業を決める上で、ぜひ知っておいてほしいことがあります。それは、「ターゲットかそれ以外か」という2軸では必ずしも分けられないということ。どちらでもない企業・リードがボリュームゾーンになることも少なくありません。

ターゲット企業でもフォロー対象外であったり、メインのターゲットリードでも企業規模とマッチしなかったりというのはよくあることです。

もちろん、ターゲット企業の条件を緩めつつ、フォロー対象外を明確にする、条件を厳しくして特定の顧客のみを追う等のマーケティング戦略で、どちらでもない企業・リードをなくしておくという方法もありえますが、一般的には「どちらでもない」領域が存在することを理解しておく必要があります。

2.ターゲットリードの条件を決める

ターゲットかどうかとフォローする対象かどうかは別問題!

ターゲットリードの条件を決める上で、非常に大切なのが「ターゲットかどうかとフォローする対象かどうかは別問題」だということ。ターゲットリードかどうかは「その時の属性情報」のみでシンプルに判断します。

例えば、次の図のような4条件がある場合には、「総務部・担当」をターゲットの条件とし、他の2つはフォローの条件にします。

顧客の購買プロセスにおけるステージごとのターゲットリードの考え方

ターゲットリードかどうかを「その時の属性情報」のみでシンプルに判断したほうが良いのは、フォローの条件は顧客のフェーズ(想像や検知、データなど)と自社の基準・意思で決まるからです。

例えば、まだ興味・関心の段階にとどまっている顧客と、すでに比較・検討の段階にある顧客であれば、比較・検討の段階にある顧客のフォローの幅を広げるというのはよくある戦略です。

そのため当社では、顧客の検討状況で区分したあとに、ターゲット企業・リードかどうかを見分けるようにしています。

フォローの優先順位づけのイメージ

顧客を購買プロセスにおけるステージで区分し、フォローの優先順位づけを行うとこのような図になります。

これに、先ほどのターゲットの色分けを重ねると下記のようになります。

この重なりをどう作り上げていくかはマーケティング戦略次第ということになります。

質のいいリード、とは?

ここで考えたいのは、「質の良いリードとは何か?」ということです。
当社では、質の良いリード=「顧客が欲しいタイミング(フェーズ)で、双方が望むような購買と商談のプロセスに至れるリード」と考えます。

例えば、興味・関心段階であれば商談ではなくセミナーの案内や資料送付をすべきですし、課題が顕在化している段階であれば電話でのコミュニケーションがベストかもしれません。

つまり、リードの質は顧客が購買プロセスのどのフェーズにあるかに依存すると同時に、態度変容を考慮して考える必要があり、「比較・検討フェーズのリードだから質が高い」「興味・関心フェーズのリードだから質が低い」というように、その瞬間だけを切り取って、一方的にリードを判断するのは間違っています。

条件を明文化し関係者間で合意・すり合わせを行う

リードの質について考えるには、マーケティング→インサイドセールス→セールスと、スムーズに流れていくように、全体の流れを意識した設計が求められます。

そのために必要なことは、関係者間での条件の明文化と合意です。
条件は適宜見直しをかけていくことと、厳格なルールとしてではなくガイドラインとして運用することが重要です。

リードの質は自社の基準と意思によって変わります。なぜなら、「フォローの条件」「トスアップの条件」には複雑な要素が絡み、インサイドセールスやセールスの肌感覚も重要だからです。加えて、事業やセールスの状況によっても判断が変わってくることも考慮しなければなりません。

3.ハウスリストと突合する

条件に合致する企業やリードをどれだけ保有しているか

最後に、ハウスリストと突合して、条件に合致する企業やリードをどれだけ保有しているかを判断します。

このような情報を抽出するには、企業単位や顧客単位で取引情報や接点情報、活動情報、商談の内容などが蓄積・閲覧・更新できるデータベース(CRM / SFA)が必要になります。

マーケティングオートメーションを導入している会社であれば、アプローチ可能なアクティブリードかどうかも、ぜひチェックしてください。定点観測することで顧客情報の欠損にも気づくことができます。

Section3:自分たちがやるべきマーケティング施策とは?

やるべき施策と優先順位の考え方

以上のようにリードを考えていくと、実はターゲット企業におけるターゲットリードは思っているより多いかもしれません。実は、足りないのはリードではなく、商談機会ということも十分にありえます。

そのため、マーケティング組織のKGIが「受注」なら、リード創出施策にだけにこだわる必要はありません。マーケティング組織の目標が受注創出に重点を置いた全体最適なのか、リード創出に重点を置いた個別最適なのかによって、マーケティング組織がやるべき施策と優先順位が変わります。

マーケティング戦略の意思決定に必要なもの

マーケティング施策の意思決定と実行に必要なもの、それは「勇気と周囲の合意」です。
かかるリソースは同じでも、目に見える成果には大きな差が出ますので、限られたリソースをどこに投下するか、勇気を持って判断しなければなりません。

例えば、対象を絞らないで10,000件のメールを配信したら50コンバージョンが取れるような場合でも、ターゲット企業のターゲットリードにだけ絞って配信するとなると、配信対象数が300とぐっと減りますので、コンバージョン数も1あるかないかという状況が考えられます。

こうしたマーケティング施策の意思決定と実行の際は、周囲の合意を得ながら勇気を持って取り組まなくてはなりません。

ここで必要になるのがBDRという組織です。

BDRとは?

BDR(Business Development Representative)とは、新規開拓のターゲット企業に対する情報収集と商談機会獲得を行うインサイドセールス部隊のこと。
これに対し、獲得したリードへフォローを行い、商談化して営業にトスアップする一般的なインサイドセールスはSDR(Sales Development Representative)と呼ばれます。

BDRはターゲットを絞り込んで積極的に働きかける、いわば「攻めのインサイドセールス」。マーケティング施策のほとんどは広いターゲットを対象とした受動的な施策なので、顧客の態度変容を促すためにもBDRを活用した不快感のない能動的な施策が重要になっています。

BDRの活動目的とKPI

ターゲット企業からのターゲットリード・商談機会獲得を目的にした積極的なアウトバウンドがBDRの活動目的であり、「興味・関心」、「魅力」、「期待」に応えるスクリプトとコンテンツとは何かという課題に向き合いながら、ターゲット企業からのリード・商談機会獲得数の向上がKPIになっていくでしょう。

マーケティング戦略を考える上で最も大事なこと

「BDRとSDR、どちらから始めたらいいのだろう?」という疑問がわく方もいるでしょう。
そこで、お伝えしたいのが、「マーケティングプランで描く戦略のスタートは、全体最適の観点でボトルネックの解消から」ということです。

次の図の中で、どの母数、どの転換率に課題があるかで、何をすべきかが決まります。

例えば、リードが少ない状態であれば、まずはマーケティング施策を増やして新規リード獲得を目指すべきです。

特定のマーケティング施策でしか、リードの獲得ができていないのであれば、オンライン・オフラインの施策を実施し、リードの獲得件数を増やしていく必要があります。

コンテンツを増やしたり、同じハウスリストに毎回、メール配信を行うだけのマーケティングでは、新規のリードは増えませんので、まだ接点のない顧客に対し、自社でアプローチできる方法がないかを考える必要があります。

まとめ

今回のポイントは「ターゲットの条件を決める」「リードの質の定義は変わる」「マーケ戦略はボトルネックの特定と解消から」の3つです。

1.ターゲットの条件を決める

ターゲットとする企業やリードの条件を明確にし、自社が保有するハウスリストと突合することで自社が求めているリードの有無を確認します。

2.リードの質の定義は変わる

ターゲットリードの条件とフォローする条件は異なります。
「質の良いリード」は、顧客が欲しいタイミングで、双方が望む商談プロセスに至ることができるリードのこと。顧客の購買プロセスにおけるフェーズ変化を考慮したフォロー設計とセットにして考えることが重要です。

3.マーケティング戦略はボトルネックの特定と解消から

受注金額や受注件数をマーケティング活動のKGIとしていた場合、全体を俯瞰した時に、マーケティング組織で実行すべきことは何か?に向き合う必要があります。もしかすると、今やるべきことはリード創出ではなく、商談機会を獲得するためのBDR立ち上げかもしれません。

個別最適を図るのではなく、全体最適を図るために現状のボトルネックの要因を特定し、解消することから始めましょう。

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