• 2020.02.28

    後継者不足が課題!中小企業の事業承継

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    後継者不足が課題!中小企業の事業承継
    高齢化社会といわれる日本ですが、中小企業の経営者も例外ではありません。後継者不足が原因の倒産が過去最多と報道されるなど、経営者の高齢化と後継者不足が社会的な課題となっています。これを「事業承継」問題といいます。

    事業承継には「親族内承継」「役員・従業員承継」「M&A」の3つの方法がありますが、いずれも5〜10年の準備が必要とされています。今回は、中小企業の事業承継問題について詳しく見ていきます。

INDEX

後継者不足が原因の倒産が過去最多に!

東京商工リサーチの調査によると、2019年1月-12月に「人手不足」が原因で倒産した企業数は426件でした。この件数は、調査を始めた2013年以降過去最多となります。

「人手不足」を原因とする倒産の内訳のうち、60%以上を占めたのは代表者や幹部役員の死亡、病気入院、引退などによる「後継者難」で、こちらも過去最高の割合でした。経営余力が乏しい中小企業では、突発的な代表者交代や従業員退職などが、倒産に直結するリスクとなっているのです。

半数の中小企業が将来的な廃業を検討!うち3割は後継者不足が原因

2016年に日本政策金融公庫が中小企業の事業承継について行った調査によると、自分の代で廃業するつもりの事業主が半数という結果がでています。

中小企業の事業承継について
出典:日本政策金融公庫総合研究所「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」

その内訳は、後継者決定済が12%、後継者が決まっていないが事業を続ける意欲がある事業主は21%、自分の代で廃業予定のため後継者が未決定は50%、後継者について時期尚早と回答した事業主は16%です。

「自分の代で廃業予定のため後継者が決まっていない」と回答した事業主の中で、「子どもに継ぐ意思がない」「子どもがいない」「適当な後継者が見つからない」という、後継者難を理由とする廃業は合わせて約3割にのぼりました。後継者不足がいかに深刻かを表すデータです。

廃業理由(廃業予定企業)
出典:同上

社長の高齢化が進み事業承継が課題に

社長年齢は調査開始以来最高年齢に達している

東京商工リサーチの全国社長の年齢調査によると、2018年に「社長 (個人事業主、理事長を含む)」の平均年齢は61.73歳と過去最高を記録しました。

年代別内訳をみると、60代が約30%を占め最も多くなっています。次いで70代が約28%、50代が約23%です。2013年の年齢別内訳と比較すると、60代が-5.5%となっているのに対し、70代は+6.5%となっており有意に増加しています。2013年に60代だった社長が同役職のまま続投したことで、2018年に70代になったことが類推されます。

社長の平均年齢推移
出典:東京商工リサーチ「2018年 全国社長の年齢調査」

経営者の高齢化は業績悪化の一因

次に、企業の業績状況を社長の年齢別に分析すると、経営者の高齢化は業績悪化の一因になりうることが示されてます。

企業の業績は「増収」「横ばい」「減収」と分類されますが、中小企業庁の事業承継に関する資料によると70代の社長が経営する企業のうち「減収」となったのは約44%、40代社長が39%となっています。70代社長の経営する企業は、減収になった割合が全年代で一番多いのです。同様に70代の社長が経営する企業のうち「増収」となったのは43%、40代社長が54%と他の年代に比べても最も割合が少なくなっています。

一概には言えないものの、社長の高齢化が業績悪化の要因になるケースがあることが推定されます。それはなぜでしょうか。

年齢が上がるほど投資意欲が減少

経営者の年齢が上がるほどリスクを伴う投資を選択する意欲が低下しやすく、企業の業績に影響していることが考えられます。

同じく中小企業庁の資料によると、投資意欲が最も低いのは70代、高いのは49歳以下の経営者でした。2018年の東京商工リサーチのデータで「増収」となった企業の割合が最も多かったのは30代の経営者であるため、投資意欲が企業の業績に影響することが裏付けられる結果となりました。

業績回復のためにも経営者の若返りを

それでは企業の業績を回復させるにはどうすればいいでしょうか?有効な解決策の一つが「経営者の交代」です。

経営者が若返った企業の方が、交代しない企業よりも「経常利益率」が高い統計も出ています。業績を回復させるためには、リスクを伴う成長のための経営戦略も必要になります。経営者交代により経営革新を行うことで、収益性向上、事業の成長につながります。業績回復のためにも、事業承継は重要な手段といえます。

事業承継の方法は「親族内承継」「役員・従業員承継」「M&A」の3パターン

事業承継の方法

親族内承継

「親族内承継」とは、子供や親戚に事業を引き継ぐことをいいます。

親族内承継のメリットは従業員や取引先の理解を得やすいこと、デメリットは相続や贈与が後継者に集中してしまうため、相続対象者が複数存在する場合は親族内トラブルに注意しなければならないことです。

現代では、子供には好きな職業に就いてほしい、経営リスクを背負わせたくないという風潮もあり、親族内承継を行う企業は減少しています。

役員・従業員承継

「役員・従業員承継」とは、親族以外の役員や従業員に事業を引き継ぐことをいいます。親族で承継する対象がいない場合に行われることが多く、近年増加傾向です。

役員・従業員承継のメリットは会社の風土や知識があり、役員であれば経営知識を既に持っており引き継ぎがスムーズであること、デメリットは株式を引き継ぐ際の資金確保のハードルが高いことです。

また、役員・従業員承継の場合、後継者が血縁者でないことを理由に従業員や株主親族が反対しないよう、周囲に協力を求めておく必要があります。

M&A

「M&A」とは、全くの第三者や企業に対して事業を譲渡することをいいます。近年、後継者不足からM&Aを行う企業が増えています。

M&Aのメリットは後継対象者がいない場合も事業承継が可能であること、デメリットはM&Aにより組織文化の融合に時間がかかることや、事業価値を高めないと買い手が見つかりにくいことです。M&Aを行う場合、民間企業や国の相談窓口で専門家に相談することになります。また、最近は売り手と買い手をつなぐ、WebによるM&Aマッチングサイトも利用者が増えているようです。

まとめ

経営者の高齢化による影響および事業承継について説明してきました。政府も事業承継問題を重要視し、各インフラの整備、相続税・贈与税納税を猶予する税制改正など集中的に対策を進めています。

事業承継を円滑に行うための準備には時間がかかります。後継者の育成の期間を考えると事業承継には5〜10年必要です。たとえば70歳で引退を考えると、60歳には事業承継の準備に着手する必要があります。

もし事業承継がうまくいかず廃業となると、事業を通じて培ってきた人脈や技術などの大切な資源が失われてしまいます。多忙の中でも事業承継準備の優先順位を高め、計画的にすすめることが重要です。

文責:大内絵梨子(中小企業診断士)
民間食品企業で人事、働き方改革関連業務に従事。中小企業診断士取得後、ヘルスケア事業の企業を中心に経営支援を展開。
二児の母として育児と仕事と経営支援の三足のわらじを履き日々奮闘する中で得た知見を活かし、経営コンサルティングや研修講師、執筆活動を行なっている。

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