• 2019.12.05

    「働き方改革実行計画」のポイントは?9項目の概要と工程表

    「働き方改革実行計画」のポイントは?9項目の概要と工程表
    政府が進める働き方改革の見取り図となる「働き方改革実行計画」について解説します。2019年から法案が施行された働き方改革ですが、今後も政府の方針に則った取り組みが進められていきます。
    企業に対応義務が発生する法改正もあり、経営者には働き方改革の方向性や施策を理解した上で、経営改革に取り組む姿勢が求められています。

INDEX

「働き方改革実行計画」とは? 政府が進める働き方改革!

「働き方改革実行計画」とは?

日本の人口は、2008年以降減少を続けています。少子高齢化も相まって2050年代には総人口が一億人を割る予測を厚生労働省が発表しています。

そして、人口の減少は労働力人口の減少という結果を生み出します。すでに人手不足が原因で経営が悪化したり、廃業を選択した企業が多数存在するように、労働力人口の減少は日本経済の維持発展に悪影響を及ぼします。

この背景を踏まえて、政府は二つの目的を実現させるための方策として「働き方改革」の推進を打ち出しました。

【 目的1】
企業の生産性を高めることで、労働力が減少する時代においても企業が必要な生産を維持できる状況を生み出すこと

【 目的2】
万人が働きやすい環境を作ることで働くことのできる人の数を増やし、それにより世の中全体の労働力不足を緩和すること

さらに、これらのことを阻害する要因として、政府は三つの働き方に関する課題を指摘しています。

【 課題1】
正規雇用者と非正規雇用者との間で不合理な処遇格差が存在することが、非正規雇用者の労働意欲を低下させていること

【 課題2】
長時間労働を前提とした働き方が定着していることが仕事と家庭生活の両立を困難にし、少子化に歯止めがかからない、子育て中の人間の労働参加を難しくする原因となっていること

【 課題3】
転職することが不利になる労働市場や雇用慣行が存在することが個人のキャリア形成を阻む要因となり、日本の生産性が低い原因となっていること

これらの課題を解決するため、政府は次の9つのテーマからなる「働き方改革実行計画」と、そのロードマップとなる「工程表」を策定しました。

① 非正規雇用の処遇改善
② 賃金引上げと労働生産性向上
③ 長時間労働の是正
④ 柔軟な働き方がしやすい環境整備
⑤ 病気の治療、子育て・介護等と仕事の両立、障害者就労の推進
⑥ 外国人材の受入れ
⑦ 女性・若者が活躍しやすい環境整備
⑧ 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の充実
⑨ 高齢者の就業促進

働き方改革実行計画で挙げられた「9項目」

働き方改革実行計画で挙げられた「9項目」

「働き方改革実行計画」には、テーマごとに政府が主体となって取り組む内容が盛り込まれています。

①非正規雇用の処遇改善

次の二つの取り組みが行われます。

・同一労働同一賃金の実効性確保
・非正規雇用者のキャリアアップ推進

非正規雇用者の労働に関しては、子育てや介護等との両立のために不本意ながら自ら非正規雇用を選択している人が2016年では非正規雇用者全体の15.6%存在していましたが、その割合を2020年中に10%以下にすることを政府は目指しています。

Ⅰ. 同一労働同一賃金の実効性確保
正規雇用者と非正規雇用者との間での不合理な処遇格差を是正し、処遇格差が存在する場合は非正規雇用者に対して根拠を説明できる状況を作ることを企業に義務付ける法律が施行されます。法律の施行時期は、大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月です。

処遇格差解消の基準として、次の三つの要素の全てが同等である場合は処遇も同等でなければならないという考え方が示されています。

・職務の内容(職種とメイン業務の内容)
・責任の程度(休日労働や時間外労働の義務の有無、ノルマの有無、職務権限の内容 など)
・配置の範囲(配置転換や転勤の有無)

処遇に関しては、賃金や賞与等の金銭的な報酬だけではなく福利厚生や教育訓練等も含めた労働条件全般に関するものであるという考え方が示されています。

また同一労働同一賃金への対応に対して、事業主と労働者双方への相談体制や訴訟手続によらない紛争解決(ADR)体制の整備を行うという方針も示されています。

Ⅱ. 非正規雇用者のキャリアアップ推進
次の三つの取り組みを行う方針が示されています。

・非正規雇用者の待遇改善に取り組む企業への支援
・労働契約法に基づく無期転換ルールの浸透
・非正規雇用者に対する被用者保険の適用拡大

非正規雇用者の待遇改善に取り組む企業への支援に関しては、非正規雇用者に対するキャリアアップや正社員化、処遇の改善、賃上げ等に取り組む企業を対象とした助成制度の拡充が行われます。

労働契約法に基づく無期転換ルールの浸透に関しては、5年以上継続雇用された有期雇用者に無期雇用への転換の申し込みを行う権利が発生するとした無期転換ルールの認知度を100%にすることを目指した啓蒙活動が進められます。

非正規雇用者に対する被用者保険の適用拡大に関しては、非正規雇用者に対する社会保険や雇用保険の適用を拡大していくための検討が進められます。

②賃金引上げと労働生産性向上

企業に対する賃上げの働きかけと賃上げしやすい環境の整備に対する取り組みが行われます。

企業に対する賃上げの働きかけに関しては、最低賃金の全国加重平均1,000円を早期に実現させるために毎年年率3%程度の最低賃金の引き上げを行い、最低賃金を引き上げるために生産性向上への投資を行った中小企業を対象とした助成制度の拡充等が行われます。

賃上げしやすい環境の整備に関しては、企業の生産性向上や人事制度整備に対する助成の拡充、下請け取引の適正化に関する法律の施行と監視体制の強化が行われます。

③長時間労働の是正

次の三つの取り組みが行われます。

・法改正による時間外労働の上限規制の導入
・勤務間インターバル制度導入に向けた環境整備
・健康で働きやすい職場環境整備

時間外労働に関しては、月45時間、年360時間以内での運用を定着させることを政府は目指しています。

Ⅰ. 法改正による時間外労働の上限規制の導入
時間外労働については、原則月45時間、年360時間の範囲内で行い、特別条項付き36協定の締結と届出を行った場合は年間6回まで月45時間を超える時間外労働をさせることができる(上限なし)と法律で定められていました。

これに関して、特別条項付き36協定を締結した場合の時間外労働に上限を設ける法律が施行されました。具体的には、次の三つの条件を全て満たすことが求められます。

・年間720時間以内
・単月で100時間未満
・2~6か月の平均が80時間以内

法律の施行時期は、大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月です。

Ⅱ. 勤務間インターバル制度導入に向けた環境整備
勤務間インターバルというのは、前日の終業時刻と翌日の始業時刻との間に一定時間の休息を確保することなのですが、2019年4月より、全ての企業が極力長い休息を確保できるように努力することが義務付けられました。

それに対して、勤務間インターバル制度を導入するための投資や専門家の指導を受けた企業に対して助成を行う制度が導入されました。

Ⅲ. 健康で働きやすい職場環境整備
労働者が健康に働ける職場環境を整備するために、労働時間管理の厳格化に加えて、職場内での良好な人間関係作りの推進や産業医・産業保健機能の強化等が行われます。

職場内での良好な人間関係作りに関しては、パワーハラスメントの防止に関する法律が今後施行され、産業医・産業保健機能の強化に関しては、2019年4月より産業医を選任している事業場に対して従業員の健康情報を産業医との間で共有することが義務付けられました。

④柔軟な働き方がしやすい環境整備

次の二つの取り組みが行われます。

・テレワークの導入支援
・副業や兼業の導入支援

Ⅰ. テレワークの導入支援
企業が在宅勤務やサテライト勤務等のテレワーク(オフィス外での勤務)を導入しやすくするために、ガイドラインの策定、テレワークの導入に関する補助や助成制度の拡充、セキュリティに関する専門家の育成と企業への派遣等が行われます。

Ⅱ. 副業や兼業の導入支援
企業が従業員の副業や兼業を容認しやすくするために、ガイドラインの策定、モデル就業規則の改定、複数の事業所で働く従業員の労働時間管理ルールの改定検討等が行われます。

⑤病気の治療、子育て・介護等と仕事の両立、障害者就労の推進

次の三つの取り組みが行われます。

・治療と仕事の両立支援
・子育てや介護と仕事の両立支援
・障害者等の就労支援

Ⅰ. 治療と仕事の両立支援
がん治療や不妊治療等を行う労働者が仕事との両立をしやすくするために、ガイドラインの策定、労働者に対する相談支援体制の拡充、両立支援コーディネーターの育成と配置等が行われます。

Ⅱ. 子育てや介護と仕事の両立支援
保育・介護支援施設の拡充、保育・介護人材の処遇改善、法律の改正による育児休業期間の延長(最長2年間)等が行われます。

Ⅲ. 障害者等の就労支援
障害者を雇用する企業への障害者雇用ノウハウの提供、在学中の障害者に対する就労準備支援等が行われます。

⑥外国人材の受入れ

外国人材受入れの環境整備に対する取り組みが行われます。

内容としては、外国人が働きやすくなるための生活や就労環境の整備、国家戦略特区による外国人の雇用機会の拡充、高度外国人材の永住許可申請に要する在留期間の短縮等が行われます。

⑦女性・若者が活躍しやすい環境整備

次の三つの取り組みが行われます。

・女性に対する教育支援や職業訓練の充実
・女性が就業しやすい環境整備
・就職氷河期世代や若者が就業しやすい環境整備

Ⅰ. 女性に対する教育支援や職業訓練の充実
雇用保険の教育訓練給付の拡充、教育講座の拡充と多様化、企業の人材育成に対する支援の拡充等が行われます。

Ⅱ. 女性が就業しやすい環境整備
配偶者控除等の収入制限の引上げ、子育て等で離職した女性を復職させる企業を対象とした助成金の創設、女性の活躍を推進する企業の認定制度の導入等が行われます。

Ⅲ. 就職氷河期世代や若者が就業しやすい環境整備
対象者に対する直接的な支援の拡充、インターンシップの実施に対する支援等が行われます。

⑧雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の充実

女性に対する教育支援や職業訓練の拡充に加えて、次の二つの取り組みが行われます。

・転職・再就職者の採用機会の拡大
・誰にでもチャンスのある教育環境の整備

Ⅰ. 転職・再就職者の採用機会の拡大
指針の策定、転職・再就職者の雇用を行うことで生産性を高めようとする企業への支援、転職・再就職者と人材不足企業とのマッチング強化等が行われます。

Ⅱ. 誰にでもチャンスのある教育環境の整備
給付型奨学金の創設、家庭の教育費負担軽減のための政策導入等が行われます。

⑨高齢者の就業促進

次の二つの取り組みが行われます。

・継続雇用の延長や定年延長への支援
・高齢者のマッチング支援

Ⅰ. 継続雇用の延長や定年延長への支援
65歳を超えた継続雇用や65歳までの定年引上げ等に対するノウハウの提供、企業訪問による相談や援助の実施等が行われます。

Ⅱ. 高齢者のマッチング支援
全国ベースでのマッチングネットワークの構築、ハローワークによる65歳以上を対象とした求人開拓の強化が行われます。

まとめ

働き方改革実行計画

政府が進める働き方改革には、企業に対応を迫る内容も多数含まれています。「働き方改革実行計画」や、どの分野でどの対応策をいつ実行するかを決めた工程表(ロードマップ)を把握していれば、慌てずに先取りした対応ができます。

働き方改革は企業にとっても従業員の定着を図り、個人の持つ能力を最大限活用する経営改革のチャンスでもあります。

文責:大庭 真一郎(経営コンサルタント)
大庭経営労務相談所 所長
東京理科大学卒業後、民間企業勤務を経て、1995年4月大庭経営労務相談所を設立。
「支援企業のペースで共に行動を」をモットーに、関西地区を中心として、企業に対する経営支援業務を展開。支援実績多数。中小企業診断士、社会保険労務士。

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