• 2019.03.28

    働き方改革とは?背景と目的をわかりやすく解説

    働き方改革とは?背景と目的をわかりやすく解説
    2019年から「働き方改革関連法」が施行され、企業にも対応義務が発生します。そもそも「働き方改革」が掲げられるようになったのは何故でしょうか。ここでは、「働き方改革」が提唱されるようになった背景と目的、「働き方改革」の課題と問題点を整理して解説していきます。

    「何かやらなければならない」と思いつつ、何から手をつけたらよいかが分からない企業も、その背景や目的を知ることが「働き方改革」の一歩となるでしょう。

INDEX

そもそも働き方改革とは?改めてその目的を紐解く

日本は2010年から人口減少社会に突入していることをご存知でしょうか。人口が減ることは、労働人口の減少につながります。この事実を受けて、第3次安倍晋三改造内閣は「一億総活躍社会」を目指すことを宣言し、政府として「働き方改革」に取り組んでいます。

「一億総活躍社会」とは、多様な働き方を可能にすることで働き手を増やし、人口減による労働力不足という大きな課題を解消するための政策です。スローガンとしては次の3つが掲げられています。

働き手を増やすこと

これまで労働の機会を逸していた子育て世代や高齢者などの人材に就労を促すこと

出生率の上昇

社会保障制度を充実させることで子どもを出産しやすい社会にすること

労働生産性の向上

労働人口が減少する社会でも経済成長を実現していくために労働による生産性を高めていくこと

これらのスローガンを実現するためには「働き方の見直し」が必要不可欠です。それを後押しすることを目的として、2018年6月の国会で「働き方改革関連法」が成立しました。この法律は2019年4月より順次施行され、全ての企業に対応する義務が生じます。

「働き方改革」とは、働くことに関する考え方を見直すことです。今まで当たり前のように存在していた仕組みを変えながら、仕事の進め方を最適化していくことが日本社会全体で求められています。

働き方改革の背景は?急速に進む労働人口の減少

日本人の平均寿命は伸び続け、世界有数の長寿国としても知られています。近年では「人生百年時代」という言葉も使われるようになりました。一方で、出生率は低水準で推移し続けています。

この結果、人口減少の中で高齢者(65歳以上)の割合が拡大を続ける少子高齢化が問題となっています。2030年には、高齢者の割合が日本の人口の1/3にまで上昇すると見込まれています。

年齢区分別将来人口推計
引用:内閣府「平成29年度版高齢社会白書」

少子高齢化がもたらす最大の問題は労働力不足にあります。先述の通り、日本の人口が減少する一方で高年齢者の割合は高くなるため、労働人口の減少が避けられません。

しかし、日本経済を発展させるためには国民全体の生産額を増やす必要があります。
そこで打ち出されたのが、「労働の質を向上させること」と「労働の量を維持すること」です。

労働の質を向上させるには

「労働の質を向上させること」とは時間当たりの労働成果を向上させる考え方です。労働人口が減少していく中で、成果を落とさずに少ない人数で業務を遂行する必要があります。

その一方、労働力不足の中で労働成果をまかなうために「長時間労働」が常態化している企業もあり、社会的に問題視されています。労働力が不足しているところを長時間労働でまかなうのではなく、生産効率を向上させることが必要なのです。

労働の量を維持するには

「労働の量を維持すること」とは雇用形態や人員配置などを柔軟に対応できるようにして、労働力の総量を維持していくという考え方です。

例えば、女性が出産や子育てとともに退職せざるを得ない環境だと、労働力の総量は減ってしまいます。そこで、女性や非正規雇用者などに対して家庭の事情やライフスタイルに合った多様な働き方を認めることで、今まで活用することのできなかった人材を労働力の中に組み入れていく「働き方の多様性」が必要になります。柔軟な働き方ができる環境を実現しなければ、労働の量を維持することは難しいのです。

これに付随した問題として正規雇用と非正規雇用の格差があります。これは、同様の業務をしているにも関わらず、正社員であるかないかで賃金に差がある状態のことです。柔軟な働き方を実現するうえでも、この格差の是正は大きな課題です。

働き方改革の対策としての働き方改革関連法

働き方改革への対応として、働き方改革関連法では以下に示す法律の改正が行われます。

時間外労働の上限規制

時間外労働において、次の3つの条件すべてを満たさなければならなくなります。2019年4月施行開始(※中小企業は2020年4月)。
① 年720時間以内
② 月45時間を超える月は6ヶ月以内
③ 2~6カ月の平均が80時間以内、単月で100時間未満

有給休暇取得の義務化

年間10日以上の有給休暇がある労働者に対して、年間5日以上の有給休暇を取得させることが義務となります。2019年4月施行開始。

勤務間インターバル制度の普及促進

勤務日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間のインターバルを置くことが義務となります(※努力義務)。2019年4月施行開始。

産業医、産業保健機能の強化

50人以上の事業場を対象に、衛生委員会や産業医に対して従業員の健康管理に必要な情報を提供することが義務付けられます。2019年4月施行開始。

高度プロフェッショナル制度の創設

高度で専門的な職務に就き、年収が一定額以上の労働者に対して労働時間等の規制の対象外とすることができます。2019年4月施行開始。

正規雇用と非正規雇用の格差是正(同一労働同一賃金)

正規雇用(正社員)と非正規雇用(非正社員)に関して、同一の労働をした場合は同一の賃金を支払うことが義務となります。2020年4月施行開始(※中小企業は2021年4月)。

中小企業への割増賃金率の猶予措置の廃止

月60時間以上の時間外労働に対して50%の割増賃金を支払うことに関して、中小企業に対する猶予が廃止されます。2023年4月施行開始。

施行開始日は企業の対応義務が開始される時期であり、時間外労働の上限規制(大企業対象)や有給休暇取得の義務化など5つの項目は2019年4月から適用が開始されます。

これらの中でも、時間外労働の上限規制や有給休暇取得の義務化、正規雇用と非正規雇用の格差是正に関しては、今後の企業経営に大きな影響を与えることが想定されます。

働き方改革関連法の課題と問題点

「働き方改革関連法」が施行されると企業に対応義務が発生することがわかりました。では単純に法律を守ればよいかというと、現場では様々な課題や問題点が出てきます。

長時間労働を是正するにあたっての課題と問題点

もし、何の対策も無しに時間外労働の上限規制を適用したとしたらどうなるでしょうか。普段から長時間労働が常態化している企業であれば、これまでの仕事がまわらなくなってしまうでしょう。

そのため、仕事量を減らすか(事業の縮小)、人員増強するか(人件費増)を迫られます。これでは、途端に経営が苦しくなってしまいます。長時間労働を是正していくためには、企業と労働者が一体となって「労働生産性の向上」を意識することが必要です。

労働生産性とは、「時間当たり、どの程度の価値を生み出したのか」を表す指標のことです。労働生産性の向上には、仕事の仕組みを最適化する必要があります。つまり、仕事をどのように進めて、どのような結果を生むことが最適であるかを常に考えながら仕事をするということです。

そのためには、本当に必要な業務であるか、今の方法が最適なのかを柔軟に考え直すことが重要です。無駄を省き、業務を効率良くすることで、長時間労働の是正が実現されます。

有給休暇の取得の義務化の課題と問題点

従業員が年間5日以上有給休暇を取得できるようにしなかった場合は、会社の責任となり罰則が科せられます。

しかし、無策に有給休暇の取得を推進すれば、正常な人員配置を維持できなくなり業務に支障をきたす恐れがあります。そこで、一般的な対応として有効なのが、「有給休暇の計画的付与」や「有給奨励日の設定」です。

有給休暇の計画的付与というのは、従業員が有給休暇を取得する日を「Aさんは○月○日と○月○日と○月○日に必ず有給休暇を消化する」というようにあらかじめ指定する方法です。この方法を行う場合は、労使協定の締結が必要になります。

また、有給休暇奨励日の設定というのは、「○月○日と○月○日と○月○日は特段の事情がない限りは有給休暇を取得してください」というように特定の日に有給休暇を消化することを促す方法です。この方法を行う場合は、就業規則上に根拠を設けることが望ましいです。

有給休暇の取得にあたっては、一人一人個別の日程でも全従業員同じ日程でも構いません。

このように、特定の時期に有給休暇を取得することを予定することが労働生産性向上への取り組みを加速させます。労働者にとっても、先の長時間労働の是正をすることができれば、この有給休暇も取得しやすくなります。

正規雇用と非正規雇用の格差是正にあたっての課題と問題点

これまで非正規雇用であったために抑えられていた人件費も、労働内容が正規雇用と同一であれば、同一の賃金を支払わなければなりません。

ここで増加する人件費を抑えるには、総労働時間を最小化する必要があります。そうするためにも、やはり短い時間で大きなパフォーマンスを追及する労働生産性の向上が不可欠なのです。

まとめ

企業が労働生産性の向上を意識した「働き方改革」へ取り組むことで、労働者にとって働きやすい環境が実現し、企業にとっても事業活動に必要な労働コストが最小化されることで生じる収益性の向上が実現します。すなわち、「働き方改革」は、企業と労働者双方に利益を生み出す取り組みなのです。

世の中の企業には、今後の事業の成長や発展に向けた道筋を見つけることを目的として「働き方改革」に取り組む姿勢が求められます。

文責:大庭 真一郎(経営コンサルタント)
大庭経営労務相談所 所長
東京理科大学卒業後、民間企業勤務を経て、1995年4月大庭経営労務相談所を設立。「支援企業のペースで共に行動を」をモットーに、関西地区を中心として、企業に対する経営支援業務を展開。支援実績多数。中小企業診断士、社会保険労務士。

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