デジタルデータ活用の重要性や成果を上げるポイントを解説

競争が激化し、消費者の動向が多様で予測が難しい時代において、デジタルデータの活用は欠かせません。

デジタルデータを活用することで、顧客のニーズを正確に把握し、カスタマーエクスペリエンスを向上させることができます。また、データから得られるインサイトは、意思決定をリアルタイムかつ効果的に行うことを可能にし、リスクを軽減します。

さらに、デジタルデータの活用はイノベーションを創出する上で統計学的に有意な影響があることが報告されており、その重要性はますます高まっています。

もし、ベテランの経験や勘などの主観的な判断が多いと感じるのであれば、データに基づいた客観的な判断へと、その基準を変える時です。

この記事では、目的別のデジタルデータ活用方法や注意点、企業の事例、成果を上げるためのポイントなどを解説します。

デジタルデータの力を最大限に引き出し、活用していきましょう。

デジタルデータの重要性

情報通信技術は経済成長の原動力として期待されており、ビジネスにおいてもIoT・ビッグデータ・AI等を活用する動きが盛んになってきています。

特に、デジタル空間だけではなく、現実空間の人やモノの状態・動作がセンサー情報として入手することができるようになってきており、生成されるデジタルデータが飛躍的に増大・多様化しているのです。

また、デジタルデータは「21世紀の石油」とも言われることもあり、データを収集・蓄積し、分析した結果を製品・サービス開発や業務効率化等に活用することは、ビジネスにおいても大きな効果を生み出すと期待されています。

一方、日本企業が国際競争力を高め、日本全体で経済成長を実現するためには、データ活用の裾野を中小企業も含めた日本全体に広げていく必要があります。

デジタルデータ活用の現状

デジタルデータ活用とは

デジタルデータ活用とは「デジタルデータをビジネスに役立てること」をいいます。

企業には、業務や顧客に関する情報など多種多様なデータが存在しています。さらに、国や地方公共団体によって発行されるデータ、またはSNS上で入手できるようなデータなど、外部からも様々な情報があふれています。

こうしたデータを収集し、そのさまざまな意味を分析することで、業務改善や事業の発展につなげることができます。

とはいえ、デジタルデータ活用について難しく考える必要はありません。

例えば、下記のようなこともデジタルデータ活用にあたり、すでに実施しているという企業は多いのではないでしょうか。

・売上データと在庫データに応じて、発注数を決める
・従業員の勤怠データから業務時間・残業の傾向を把握し、業務を整理する など

データ数と種類が多く、分析の質が高いほど、データ活用の成果は大きくなります。

多くの企業がデジタルデータ活用に取り組み、効果を実感

企業規模を問わず、国内企業の多くはすでにデジタルデータ活用に取り組み、その効果を実感しています。

次のグラフは、総務省によるデジタルデータ活用の調査結果です。

データを活用している業務領域は「経営企画・組織改革」「製品・サービスの企画、開発」「マーケティング」が多く、いずれかの領域でデータを活用している企業は、大企業では約9割、中小企業でも過半数を超えています。

産業別では、製造業が進んでおり、エネルギー・インフラ、サービスでは6割程度に留まっています。

また、以下のグラフはデジタルデータ活用の効果の有無を表しています。

デジタルデータ活用する効果は、いずれの領域でも過半数を超えており、「生産・製造」「物流・在庫管理」「保守・メンテナスサポート」の領域がやや高い割合となっています。

このような現状から見て、デジタルデータ活用は日本企業において概ね浸透しており、あらゆる領域でも一定の効能が期待できるものだと言えるでしょう。

データ分析との違い

「データ分析」は、データ活用と非常に似ており、多くの人が混同してしまう言葉の一つです。

実際の違いを確認しましょう。

データ分析は、データ活用の手順の一環として行われる作業です。

データ活用は、データの収集を行い、そのデータの意味を分析し、その分析結果をビジネスに生かすというプロセスです。

言い換えれば、データ分析は、データ活用において不可欠な作業であり、データ活用の一部となる取り組みといえます。

デジタルデータ活用に使用するデータの種類

デジタルデータ活用に使用するデータには、「社内データ」と「外部データ」の2種類があります。デジタルデータ活用の成果を挙げるためにはどちらも収集していくことが重要です。

社内データ ・売上データ(売上高・販売数・原価・顧客単価など)
・顧客データ(購入履歴・問い合わせ内容・属性など)
・製品データ(設計・部品・設備状況など)
・商談データ(成約率・件数など)
・広告データ(DM反応率・アクセスログ・クリック数など)
・業務データ(内容・手順・所要時間・担当者の動きなど)
・人事データ(人員・労働状況・人件費など)
外部データ ・オープンデータ
(統計資料、政府や地方公共団体から提供されるデータなど)
・経済情勢データ
・気象データ
・位置・交通データ
・インターネット検索データ
・SNSデータ など

次のグラフは、企業がデータ活用に使用しているデータの種類を表しています。

調査結果によるとデータ活用においてよく使用されるデータは、次のようなものになります。

・顧客データ
・電子メール
・アクセスログ
・経理データ
・業務データ
・販売記録

主に顧客とのやり取り、社員の動向に関するデータが活用されているといえます。

また現状では、あまり多くないものの、センサーデータや気象データなどもデータ活用に対象になることがわかります。

デジタルデータを活用するメリット

根拠に基づく意思決定が可能になる

データの活用により、客観的な事実に基づいた迅速な意思決定が可能となります。これにより、現状を正確に把握し、最適な判断を行うことが容易になります。

また、データを活用して議論することで、関係者間でリアルタイムに共通認識を形成し、スピーディな意思決定が実現できます。

現状を素早く正確に把握できる

データ活用により、自社の事業状況や課題が客観的に可視化されるため、より正確に現状を把握することができます。

データを活用しない場合、現状の把握は可能ですが、主観的な判断や検証に時間がかかる可能性があります。

一方、データ活用を行うことで、売り上げの落ち込みなどに対しても販売状況や顧客ニーズを可視化し、迅速に原因を特定することができます。

新たなビジネスの可能性を見つけやすくなる

データ活用は、新たなビジネスの可能性の発見にも役立ちます。

現状の改善点や新戦略は、ゼロから発見することは困難です。しかし、データ活用による多様なデータの収集と分析により、ビジネスの示唆が見つかります。

その結果、以下のようなことが可能になります。

・需要の将来予測に基づいて新商品を開発する
・コスト削減のために生産性向上のボトルネックを特定する

データ活用によって課題やより良いプランが示唆され、新たなビジネスの可能性につながるのです。

デジタルデータ活用を行う際の注意点

データの信憑性

大前提として、データの信頼性がない場合、そのデータの分析結果も有用な情報とは言えません。

誤った分析結果は、正確な事業計画の策定を妨げるだけでなく、不必要なコストや手間を増加させる可能性もあります。

データの信頼性は、データ活用の基盤となる重要な要素です。

したがって、一定の基準を設けてデータを抽出することや、一定のサンプルサイズを確保するなど、信頼性を確保するための対策を講じることが重要です。

プライバシー侵害

データの種類や活用方法によっては、プライバシー侵害のリスクが存在することがあります。
特に、大量のデータや個人情報が含まれる場合、提供者の特定が可能になる可能性があります。

さらに、個人が特定されない場合でも、データの漏洩が発生すれば企業の評判に大きな悪影響を及ぼすことがあります。

そのため、データは個人が特定できない形式で保存されるべきであり、セキュリティ対策も適切に実施する必要があります。

担当者のスキル不足

データ分析においては、データを活用した合理的な意思決定を支援するデータ分析の専門家である「データ・サイエンティスト」の採用が最適です。

しかし、データ・サイエンティストには、ITに関するアルゴリズムや統計などの情報科学理論に加えて、市場の動向や自社の事業や状況に深い理解が必要です。

現実的には、これらのスキルを備えた「適役」が企業内に存在することは稀です。

そのため、まずデータ分析を専門の領域と認識し、外部コンサルタントによるデータ分析のサポートを活用しながら、将来的にはデータ分析を「内製化」するために社内の体制を整えることが重要です。

目的別:デジタルデータの活用方法

売り上げを伸ばす

売り上げを伸ばすためには「現状の売上と影響を及ぼす要因」を可視化するためのデータが必要です。下記のようなデータを用いて分析を行い、実施する施策や対策を決めます。

・売上データ(売上高、商品単価、原価、顧客単価、変動率など)
・顧客データ(顧客属性、リピート率など)
・競合・類似品の動向(販売状況、口コミや反応など)
・広告データ(成約率、反応率など)
・景気状況(世論、相場、統計など)

業務効率化

「業務の実情と効率化のボトルネック」を明らかにするためのデータが必要です。下記のようなデータを用いて分析を行い、実施する施策や対策を決めます。

・業務データ(内容・所要時間・担当者など)
・設備データ(機械の稼働状況・トラブルの有無と頻度など)
・人事データ(残業時間・人件費など)
・同業他社の業務状況(統計・事例など)

マーケティング最適化

「現在の施策効果と消費者ニーズ」を把握するためのデータが必要です。下記のようなデータを用いて分析を行い、実施する施策や対策を決めます。

・顧客データ(属性・購買履歴・リピート率など)
・商品・サービスの評判(問い合わせ内容・クレーム・SNSへの書き込みなど)
・消費者の思考・行動パターン(アンケート・インターネット検索やSNS上の流行など)
・売上データ(売上高・変動率・商品単価・原価・顧客単価など)
・在庫データ(適正数・回転率など)
・広告データ(反応率・成約率など)

デジタルデータ活用事例

資生堂

ウェブ上での行動履歴、店舗での購買履歴等を統合して分析し、マーケティングに活用。

広告出稿から態度変容の起こる割合、実際に購入する割合の目標値を設定し、顧客アプローチのパターンをいくつか作って同一環境でA/Bテストを行い、良い要因・悪い要因の仮説を出すというプロセスを実施し、半年間で理論上172%効率化を達成しました。

概要

主体:株式会社資生堂

• 業種:製造業(化学)

• 課題:商品やブランドの価値を伝える場の減少(マス広告の効果下落)

• 活用しているデータ:ウェブ上での行動履歴、店舗での購買履歴、外部のオーディエンスデータ、リサーチデータ

• 活用しているツール・技術:マーケティングオートメーション
ツール、コミュニケーションツール

• データ活用の体制:オンライン上のコミュニケーションとECのコミュニケーションを同じ部署で統括するように変更。ECの体制にブランド担当制を導入。データ・ドリブンなマーケティングのための社内外のハブ機能を持つメディア統括部を設置

効果、課題等

効果:データ分析をして、ユーザー層、いわゆるペルソナを作成してプランニングに活用。セグメントを作成して、広告を配信し、ウェブ上の行動を分析して、次の施策に活用

• 広告出稿から態度変容の起こる割合、実際に購入する割合の目標値を設定し、顧客アプローチのパターンをいくつか作って同一環境でA/Bテストを行い、良い要因・悪い要因の仮説を出すというプロセスを実施し、半年間で理論上172%効率化を達成

• 課題:データの拡大、クリエイティブなデータ活用(新しいデータ活用方法の発見)

株式会社マルイ

岡山県を中心にスーパーを展開するマルイは、経験則ではなくデータで裏付けすることで発注量を算出し、意思決定のスピードを速めて生産性を向上する取組を進めています。

同社は、BIツールを導入し、店舗の売り上げや在庫情報、カード会員情報、電子マネーの利用率など、さまざまなデータを一元管理できるプラットフォームを構築しました。

これにより、店舗の販売データから商品ごとの売れ行きをリアルタイムに把握したり、競合対策のマーケティング施策をデータに基づき素早く実施できるようになり、機会損失の防止に成果をあげています。

4店舗に導入した結果、店舗によっては精肉商品の売り上げが2割増加、粗利率も4店舗平均で7~8%向上しています。

概要

主体:株式会社マルイ

• 業種:小売業

• 課題:機会損失の防止、また、今後顧客ニーズが多様化するにつれて取り扱う商品も多品種少量展開に向かうとみられ、人の感覚による発注では対応しきれなくなるという懸念

• 活用しているデータ:店舗の売り上げや在庫情報、カード会員の統計データ、カード会員の登録者数、電子マネーの利用率など

• 活用しているツール・技術:BIツール

• データ活用の体制: 2018年3月に、スーパーの肉売り場の映像と各店舗のリアルタイムな商品の販売データが表示される「ミニプロセスセンター」を4店舗を開設。従業員が大型のディスプレーを確認しながら作業を進める。

効果、課題等

• 効果:機会損失の防止効果は確実に出ており、店舗に よっては精肉商品の売り上げが2割増加。粗利率も4店舗平均で7~8%向上している。この成果を受け、2019 年度中に全店の精肉商品の配送を一手に担う大型プロ セスセンターを設置することを決めた。

• 課題:これまでデータに基づくPDCAサイクルを回したこと のない従業員が大半。そこで、すべての店舗の店長にタブレット端末を配布するとともに、教育専門部隊を設置。 実際にデータを見ながら施策や競合対策を検討して、実行させるトレーニングをすることで、早期にデータに基づく施策を打てる体制作りを進めている。

ミツカン

日本気象協会(JWA)とX社(旧:Twitter Japan)は、気象データとツイートデータを組み合わせて商品の需要を予測するサービスを提供し、ミツカンはそのデータを活用しました。これにより、余剰在庫を削減できました。

ツイートデータ活用で算出しているのは「体感指数」です。
気温だけで需要を分析すると、同じ気温なら分析結果も同じになるが、実際には、同じ30度でも5月の30度と8月の30度では湿度などが作用して感じ方が違うので、体感の数値化に取り組んでいます。

概要

主体:ミツカン

• 業種:食品

• 課題:冷やし中華は基本的に夏にしか食べないので、夏の終わ
りに売れ残ったつゆはロスになってしまうことが課題。

• 活用しているデータ:気象データとツイートデータ

• 活用しているツール・技術:日本気象協会(JWA)とTwitter Japanの気象データとツイートデータを組み合わせて商品の需要を予測するサービス

• データ活用の体制:日本気象協会(JWA)とX社(旧:Twitter Japan)は、気象データとツイートデータを組み合わせて商品の需要を予測するサービスを提供し、ミツカンはそのデータを活用している。

効果、課題等

• 効果 商品(冷やし中華)の余剰在庫を35%削減できた。

• 課題:気温は地域によって異なるので、体感指数も当 然地域ごとに変わる。ツイート数は人口に比例するので、 現在の収集方法だと人口が少ない地方のツイートデータ が足りない。そのため今後は、能動的にデータを収集する 方法を考えなければならない。

参照元:総務省デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究別ウィンドウで開きます
参照元:デジタルデータ活用の現状と課題別ウィンドウで開きます 

デジタルデータ活用で成果を上げるためのポイント

デジタルデータ活用をし、成果を上げるためには「進め方」が重要になってきます。
まずは現場の棚卸しをし、現状を知ることを一番初めに行います。

そして、現場の課題を把握した上で、複数ある課題の中から、どこをどのように改善していく必要があるかを調査しましょう。

その上で、所持しているデジタルデータをどのように活用するか目的を決めていきます。

よくありがちな失敗としては、目的を決めずにデジタルデータ活用のためのツールを導入してしまうことです。

目的が明確になっていない段階でツールを導入しても、社内でツールを使用することが定着せず、気づけば誰も使用していないなんてことがあります。

まずは現状を把握し、課題を明確にした上で、目的を決めて、自社に合ったツールを選んでいきましょう。

まとめ

デジタルデータ活用は、ビジネスにおいてデータを活かすことを指します。組織内外から収集したさまざまなデータを分析し、その洞察をもとに業務改善や事業の成長を目指す取り組みです。

デジタルデータは、大きく分けると社内データと外部データになり、データ活用の成果を最大化するためには、目的に応じて両方のデータを収集することが重要です。

現代ではデジタルシフトが進み、顧客のニーズも多様化しています。このような環境で生き残るためには、データ活用が不可欠です。ぜひこの機会に、本格的なデータ活用の取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。