家電量販店でも良く見かけるインクジェットプリンターは、年賀状の印刷やパソコン出力用など、家庭でも広く使われています。これに対して、産業用インクジェットプリンターは、テキスタイル、商業印刷、PE(Printed Electronics)などの分野で使われており、その用途はますます広がっていくと思われます。
サイン・ ディスプレイ |
屋外で使用されているサイン看板、ディスプレイの出力、制作には、大判インクジェットプリンターが活用されています。 |
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グラフィック | 飲食店やアミューズメントショップ等の店内グラフィックポスターの出力、制作にも大判インクジェットプリンターが活用されています。 |
ラベル印刷 | バーコード、RSS、QR、宛名ラベルなどの商業ラベル印刷には、インクジェットプリントが向いています。 |
電子材料 | LCD(液晶)用のカラーフィルター形成や回路基板の配線など、電子材料へのインクジェット技術の活用が始まっています。 |
捺染 (テキスタイル) |
アパレル業界では、インクジェット方式の捺染が注目されています。 |
コニカミノルタでは、ピエゾ素子の一つであるシアモード型圧電素子を用いたインクジェットヘッドを開発し、産業用インクジェットプリンターメーカーにご提供しています。シアモードアクチュエーターでは、インクチャネルの壁を形成する圧電材料(PZT)に電界を加えて剪断変形させ、インクチャネルの容積を変化させてインクをノズルより射出します。低電力駆動が可能なため多チャネル化が容易で、各種特性のインクが使用可能といった特徴があります。
産業用インクジェットプリンターには画質を落とすことなく高速印刷をする事が要求されており、特にヘッドを固定してメディア側を搬送して印字するシングルパス印字方式において、より高速に駆動できるインクジェットヘッドの開発が望まれています。
従来のヘッドは、コニカミノルタ独自開発の「HA(Harmonica)構造」で、これに、ノズルを3つの群に分けて順にインクを射出する「3サイクル駆動技術」を組み合わせていました。「3サイクル駆動技術」は、インクの高密度化には有利ですが高速駆動には限界がありました。
一方、インクチャネルの両側にエアチャネルを設ける「独立駆動方式」をとれば各チャネルは独立に駆動することができ、高速駆動には有利ですが、ノズル密度が低くなるために画質レベルが低下するという問題がありました。
そこで新たなヘッドアクチュエーターとして「多列HA(Harmonica)構造」を開発し、従来のノズル数(1024ノズル)は保ったまま、「独立駆動方式」の採用を可能にしました。この結果、駆動周波数は従来ヘッドの13kHzに対して、新ヘッドでは45kHzと3倍以上の高速化を実現しています。
アクチュエーターの列を増やせば高密度化は可能ですが、インクチャネルへの電圧供給とインク供給に課題があり、これまでのヘッドでは2列が限界でした。
今回、長年培ってきた高精度加工技術、精密接合技術、プロセス技術、材料技術を駆使し、4列のHA構造を完成しました。
配線基板では、インクがインクチャネル以外に入らないように、インク供給穴は高精度に形成されなければなりません。またチャネル内部の電極は、高密度配線基板により配線基板端部に引き出され、駆動ICへと接続されて4列のチャネルが駆動されます。さらに、高精度な印字のためにノズル列間の距離は非常に短く、高密度加工が施されています。
アクチュエーターと同様にインク流路の設計は安定した射出に極めて重要です。
新ヘッドでのインクの流れは極めてシンプルです。4列のインクチャネルの上方には、1つの共通インク室があり2つのインクインレットをもっています。インク中の泡は上方に浮かぶため効果的に除去でき射出に影響を与えません。インレットからアウトレットへとインクを循環させることも可能で、セラミックインクのように粒子径の大きな顔料を含み、沈降しやすいインクを使用するのに有利です。