ノートパソコンやスマートホンなどのバッテリーに使われているリチウムイオン2次電池は、エネルギー密度が高いなどの利点があり、カセッテ型DRでも広く採用されています。しかし、リチウムイオン2次電池は、製造品質不良に起因する高温、発煙、発火のリスクが高いといえます。
コニカミノルタは、カセッテ型DRを設計するに当たり、この機器が患者さんに直に触れるものであることを考え、高温になるリスクの高いリチウムイオン2次電池を使用することは不適切と判断しました。代わりに、安全性を満たすバッテリーとしてリチウムイオンキャパシタを採用することにしました。
リチウムイオンキャパシタは、電気2重層キャパシタの正極と、リチウムイオン2次電池の負極を組み合わせたハイブリッド構造の蓄電部品です。正極に活性炭を使用するため、金属酸化物を使うリチウムイオン2次電池のような熱暴走反応が起こることはありません。
リチウムイオン2次電池と比べると、リチウムイオンキャパシタには、充放電の繰り返し可能回数が100倍以上であるために長寿命であるという利点もありますが、エネルギー密度が5分の1程度と小さいために多くのエネルギーを貯められないという難点もあります。
エネルギー容量が小さいリチウムイオンキャパシタを採用するには、少ないエネルギーでも十分なバッテリー駆動時間や撮影枚数を確保するための、省電力技術の開発が必須となります。
画質を左右する重要部品でありながら消費電力が高いReadout IC(センサーの各画素から電荷を読み出すための重要部品)の省電力設計に成功しました。
また、無線LANモジュールや通信用CPUでは、動作が不要な期間はスリープ状態に遷移してダイナミックに電力を制御しています。
システムレベルでの工夫として、撮影と撮影の間の休止期間が短い場合はセンサー部分への電力供給を維持し、その他の部分への電力供給をストップする「センサーオン待機」状態を採用しました。一方、休止期間が長くなる場合は、定期的に無線通信を行う以外はすべて休止状態になる「スリープ待機」状態へと遷移させます。この2つのモードを状況に応じて自動的に切り替えることで、さらなる省電力を実現しています。
これらの省電力設計により、従来製品※に比べ、画像読み取り時には約2.5分の1、待機時には約10分の1の消費電力量を達成。バッテリーにリチウムイオンキャパシタを用いても、フル充電で駆動時間5.8時間、撮影可能枚数211画像という十分な性能を確保することができました。
※従来製品:コニカミノルタ製「PLAUDR C30」
リチウムイオンキャパシタの採用は、プラスアルファの効果をもたらしました。エネルギー容量の小さいことが利点となり、充電時間を短くすることができました。フル充電に要する時間は専用のクレードルを使用した場合で30分以内と、一般的なカセッテ型DRの約4分の1以下を可能にしています。
高速充電機能では、3分間の充電で十数枚の撮影が可能なため、バッテリーが空の状態での急な撮影にも即座に対応することができます。
リチウムイオンキャパシタが長寿命であるために、原則、バッテリー交換の必要がなくなりました。これは廃棄物の削減や、資源消費の削減にも役立ちますが、カセッテ型DR本体の構造に劇的な変化をもたらしました。
バッテリーパックの交換が必要な製品では、バッテリーパックを抜き挿しするための機構が必須となり、筐体構造が複雑化して、カセッテの軽量化や機械的強度面で十分なメリットを得ることができません。
コニカミノルタのカセッテ型DRは、バッテリー一体型の構造なので、継ぎ目の無い筒型形状のモノコックカーボン筐体にすることができました。これにより、軽量でありながら極めて高い堅牢性を実現しています。