コニカミノルタ

想いが生み出すイノベーション

 - KM-R7の思い出 三浦しをん

小説を手に持って読みたい方へ 印刷用PDF

ちょっと未来の、不思議な街。アンドロイドが
おばあさんと暮らしておりました。モデルは、今は亡き夫。一人と一体の幸せな暮らし。けれども、おばあさんが亡くなったとき、「彼」は気づきます。わたしには名前がない。わたしはいったい何者だろう。悩む「彼」の前に現れたのは……。

 その青年には名前がなかった。

 十年まえにKM-R7型アンドロイドとして工場から出荷され、ササキ家のインターフォンを押した。ドアを開けたササキさんのおばあさんは、青年を見て「あらまあ」と言った。

「シンイチさんにそっくり!」

 あたりまえだ。青年は、おばあさんの連れあいのデータをもとに作られたのだから。

 若くして死んだ「シンイチさん」は、ずいぶんおしゃれなひとだったらしい。

三次元デジタイザが設置された洋服店で、年に一度は詳細に自分の体型を計測した。ぴったりの服をあつらえるために。

 三次元デジタイザは、レーザービームの反射光で立体物を測定する機械だ。どんな凹凸だろうと、直接触れることなく、三次元データとしてパソコン上に画像で再現してみせる。目もとの小さな皺(しわ)まで正確に。画像はカラーだから、皮膚のくすみやほくろまで忠実に写し取った。

 おばあさんは年金生活をつづけるうちに、ある日気づいたのだそうだ。

「そうだ、シンイチさんのデータは、まだお店に残っているはず。それを使って、気立てのいいアンドロイドを発注したらどうだろう」

 と。

「シンイチさん」に先立たれて以来、おばあさんは長く一人で暮らしてきた。子どもはいない。死ぬまでのわずかな時間ぐらい、もう一度、好きなひとと同じ姿形をしたものと過ごしたって、バチは当たらないはずだ。幸い、アンドロイドを一体注文できるぐらいの貯えはある。

 こうして、青年は誕生した。いや、生産された。

  • 小説の舞台裏を見学しよう!SideStory SFは久しぶりの挑戦、と三浦しをんさん。最先端の科学技術と直木賞作家のコラボレーションで生まれた3つの小説の舞台裏には、コニカミノルタの最新製品と技術がありました。三浦しをんさんと、未来の技術をのぞいてみよう!
  • 3次元デジタイザで未来のライフスタイルはどうなる?その技術の先進性は?詳しい情報はこちら

ページトップへ戻る