一見、ただのガラス板がやさしく光る!
小説の冒頭に登場した最初の未来技術。それは「有機EL」です。
主人公のミノル君とカニコちゃんの兄妹が暮らす未来都市で、「光るベッド」をはじめ、街のさまざまな照明に使われている有機EL。
でも、ベッドが光ったりするなんてこと、実際に可能なんでしょうか? それこそ絵空事のSF的なおとぎ話じゃないのでしょうか?
「すみません。有機ELって、そもそもなんですか?」
東京都日野市にあるコニカミノルタの工場での、三浦さんの第一声です。
ですよねえ。そもそも有機ELって、いったい、なんだろう。
コニカミノルタの有機EL担当の宇野光彦さんに説明していただきましょう。
「こちらをごらんください」
取り出したのは、10センチ角ほどのサイズの薄いガラス板。ガラスの中にはアルミ箔のようなものが封じ込めてあるため、一見、鏡のようにも見えます。はじっこには電極があり、そこから電源に繋がるコードが延びています。
「これが有機ELです」
うーむ。そういわれても。ただのガラス板にしか見えません。
「百聞は一見にしかず。電気を流してみますね」
スイッチを入れると同時に、ガラス板全体がふわっと白く光りました。
「わあ、すごい」
三浦さん、思わず声を上げます。
「きれいですね。面がそのまま光ってる。だから、なんというか、やさしい光」
なるほど、小説に出てくる照明はこの光るガラス板の進化形なんですね。
「でも、電球が入っているわけでも、蛍光管が内蔵されているわけでもないのに、なぜこの薄いガラス板が光るんでしょう?」
三浦さんは光るガラス板を指差しながら質問します。
すると宇野さん、会心の笑みを浮かべました。
「これ、ガラス板が光っているんじゃないんです。電気を通すと発光する性質の有機物がうすーくガラス板にコーティングされているんです。電気を通すとその薄い膜が光る仕組みなんですね」
どのくらい薄いんでしょう?
紙よりも薄く、熱も出ない!
「この板は0.5ミリ厚のガラスを2枚張り合わせているんですが、その間にコーティングされた有機物の膜の厚さはナノメートル単位。紙よりも薄いんです」
紙より薄い!
「ええ。しかも原理的にはいろいろな色の光を出せます。光の三原色をRGBといいますが、赤(RED)、緑(GREEN)、青(BLUE)の各色に光る有機物の配合をそれぞれ変えてあげることで、光の色もコントロールできます」
色まで自由に出せちゃうんですね。
「それだけじゃありません。有機物がコーティングされている面が光るので、コーティングする基材の材質によって、自由に曲げることもできます。たとえばガラスの代わりにプラスチックを使うと……」
宇野さん、プラスチック製の薄い板を取り出しました。こちらもコードがついていて、スイッチを入れると光ります。すると、宇野さん、このプラスチック板の端と端を持ってぐにゃぐにゃ曲げ始めました。

「あ、光ったままで、曲がっちゃう! うーん不思議です」
三浦さん、目を丸くしてます。
でも、驚くのはまだ早い。それだけじゃないんですよ。
「三浦さん、この板を直接触ってください。どうです、光ってるけど熱くないでしょう?」
「ほんとだ、ぜんぜん熱くない! 」
そうなんです。有機ELは従来の光源に比べて、熱がほとんど出ません。つまり、熱を出さずに電気エネルギーのほとんどを光に変えることができるのです。すなわちものすごい省エネルギー光源なんですね。









