高精度で立体物の形を記録する3次元デジタイザの秘密
コニカミノルタの未来技術を作家三浦しをんさんがレポートするこのシリーズもいよいよ最終回。最後に登場するのは、小説のなかで、おばあさんと暮らしたアンドロイド「シンイチさん」を生み出した、「3次元デジタイザ」という技術です。
「3次元デジタイザ」とはどのような技術なのでしょう。また、どのような場面で使い道があるのでしょう。
三浦しをんさんが訪れたのはコニカミノルタの新宿オフィスです。
「あのお、3次元デジタイザって、そもそもなんでしょう?」
三浦さん、こう切り出します。そうですよね、3次元デジタイザって名称、聞いたことあるひと、あんまりいないですよね。
「ははは、おそらく初めて聞く名だと思います」
笑顔で答えるのは、3次元デジタイザ営業担当の岡村さんです。
「まずは、3次元デジタイザとはどのような技術か、簡単にご説明しましょう」
よろしくお願いいたします。
「3次元デジタイザは、対象物に全く触れることなく、立体物を3次元データとして、コンピュータに記録することができる技術です」
「え、そんなこと、どうやったらできるんですか?」
「レーザー光を利用するんです。専用マシンからレーザー光を対象物に照射し、対象物から返ってくる反射光を専用マシンが受光します。この作業を繰り返すことで、レーザー光にスキャンされた対象物の3次元の外観形状をコンピュータに取り込んでいくことができるんですよ」
「すごい! またまたSF映画みたい!立体物のかたちをそのままさわることなく記録することができるんですね」
三浦さんのおっしゃるとおり、今回取材した未来技術は、まさにハリウッド製のSF映画に出てきそうなものばかり。それだけに気になることがあります。
「こうやって、スキャンして取り込んだ3次元データは、どのような場面で使われているんですか?」
そうです。3次元データの用途はいったいなんでしょう。岡村さんが教えてくれました。
「実に幅広い場面で使われているんですよ。この技術が開発されたのは10数年以上前ですが、当初は人の身体を測るとか、顔を測るとか、もしくは遺跡のようなものを測っていました。いわゆる非工業分野での利用です。それが最近では、実際の工業製品の形状を取り込んで、製品が設計図どおりにちゃんとできているのか確認するなど、工業分野で実用的に使われるようになっています」
「遺跡、っておっしゃいましたよね。遺跡を計測するんですか?」
「仏像や建造物などの遺跡や文化財などは、常に劣化や焼失などの危機にさらされています。ですので、これらの正確な3次元データをとっておくことが重要です。仮に一部分が欠損したとしても、取っておいた3次元データをもとに正確な復元が可能になるからです」
なるほど、3次元データをスキャンすることで、立体設計図を作っちゃうわけですね。大きさとしてはどれぐらい大きなものまでスキャンできるんですか?
「大きいものですと2~3メートルくらいのものが計測できます。もちろん1回でスキャンできる部位のサイズは限られていますから、さまざまな角度からデータをとり、それを重ね合わせることで、最終的に1つの立体データをつくるわけです」
ヘンリー8世はメタボだった! 3次元デジタイザが明かす驚異の事実
「ひとつ3次元デジタイザ技術で分かった、面白い事実をご覧いただきましょう」
岡村さんが手元の資料を取りだしました。資料には、スキャンされた人の体の絵が、2体載っています。しかも、同じ人が徐々に太っていったような並べ方で……。
「いったい誰の体ですか?」
「こちらは、イギリスの中世の王様、ヘンリー8世の体形の変化を絵にしたものです」
ヘンリー8世といえば、16世紀のイギリスに君臨した、かのエリザベス一世の父ですね。
「そんな昔のひとの体形が、なぜスキャンできるんですか?」
たしかにそうですね。三浦さんの言うとおりです。まさかミイラでも残っているのでしょうか?
「違います。実はヘンリー8世が若いころから身につけていた鎧や兜がいくつも現存しているのです。その鎧や兜をスキャンすることで、ヘンリー8世の10代の体形、20代の体形という具合に、身体の変化を見てとれるわけです」
「それにしても……、随分と太ってますねえ」
「そうですね、ご覧いただいているのは28歳と49歳のときのヘンリー8世の体型です。胴回りは36インチから50インチへと順調に育っています」
「ああ、中世の人の体形までわかってしまうのですね! ちょっといやだなあ(笑)」
「3次元デジタイザのおかげで、ヘンリー8世の体形は単に太っていただけではなく、けっこうマッチョだった、ということなど、色々な発見がありました」
鎧や兜から昔の人の体形がわかってしまうというのが面白いですね。








