産業としては衰退してしまった養蚕業ではあるが、集落共同体時代からの長い歴史の中で培われてきた“蚕を育てる心”は現在の秩父人の心に引き継がれているように思う。
養蚕の生産現場をドキュメント的に追求し、農村の生活を記録として残し、それを作品づくりへつなげていくという、自分の中では新しい試みを計画した。
養蚕農家はなかなか見つからなかった。しかし、偶然にも代々養蚕を続けてきたYさんと出会った。80歳前後のYさんは無口な性格ではあるが、何度もお宅にお邪魔する中でボツボツ話をしてくれるようになった。
その内容はYさんが大地にしっかり足をつけ、丁寧に人生を送ってきた証としての"百姓魂"とも言うべきものであった。それらの話は夏の花火のように一瞬の感動を得るようなものではなく、ジワジワと心に広がっていくような非常に濃度の濃いものであった。
この感動は今回の作品づくりに役立っただけでなく、私の今後の生き方にも影響してくるように思える。
これまで秩父の里を、時間の流れと空間の変化の中でとらえ、そこに住む人々の生活観や心模様を表現しようと試みてきた。その延長線上のどこかに“里の祭り”があると思っている。
現在農村は過疎化が進み、若者が少なくなっている状況ではあるが、祭りという非日常には若者たちは村に戻り、何のためらいもなく共同体のつながりを再現する。
『“蚕を育てる心”と“祭りの心”とは表裏一体なもの』というコンセプトを、今後の追求課題にしていきたいと思っている。
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