2019年の日本の国内出生数が予測より2年早く90万人を切り、また日本の総人口も鳥取県が消滅する規模で減少したニュースが大きな話題となりました。
厚生労働省が発表したデータによると、2019年の日本の国内出生数は86万4千人となりました。政府は国内出生数が86万人台となるのは2021年と予測していたため、減少のペースが2年早まったとニュースで話題になりました。2018年の国内出生数は91万8400人であり、少子化のスピードが加速しています。
一方、2019年の死亡数は137万6千人となりました。死亡数から出生数を引いた日本の総人口の減少数は51万2千人となり、鳥取県の人口に匹敵します。現在の日本の総人口に占める生産年齢人口(15歳から64歳までの人口)は60%であるため、一年間で30万人を超える労働人口が減少した試算になります。
日本の少子高齢化は今後も進んでいくと予測されているため、年を追うごとに労働力不足が深刻化することになります。
日本の2019年7月1日現在の総人口は1億2626万5千人(※1)であり、前年同月と比較して26万4千人、割合にして0.21%の人口減少となっています。少子高齢化が進むことで今後の日本の人口減少割合が拡大し政府の将来人口予測(※2)によると、2050年には総人口が約1億人にまで減少すると予想されています。
※1 出典:総務省統計局「人口統計2019年12月報」総人口に占める生産年齢人口の割合が現状の60%を維持できたとしても、30年後には生産年齢人口が1575万9千人減少することになり、企業の国内での生産活動に大きな影響を与えることになります。
国内での労働力を表す用語として「生産年齢人口」と「労働力人口」があります。「生産年齢人口」は、国内で行われる生産活動に従事する中核の労働力となることが想定される年齢人口を表す経済学用語であり、日本では15歳以上64歳以下の人口が該当します。一方、「労働力人口」は、15歳以上の人口の中で、実際に就労している人口と完全失業者(就労する意思はあるものの就労できていない人)を合計した人数のことを言います。
二つの指標のうち、日本の労働人口の変化に対してより大きな影響を与えるのが生産年齢人口です。生産年齢人口は、日本の総人口の減少に伴い絶対数が減少していくとともに、日本の年代別人口構造の変化に伴い総人口に占める比率も減少していきます。
日本の年代別人口構造に関しては、2016年は、年少人口(0歳~14歳)が総人口の12.4%、生産年齢人口(15歳~64歳)が総人口の60.3%、高齢者(65歳以上)が総人口の27.3%という構成比率だったのが、2050年には、それぞれの構成比率が10.6%、51.8%、37.7%になるという予測(※3)が発表されています。
現在のペースで少子高齢化が進んだ場合、40年後の労働人口が4割減少するという予測があります。このことを踏まえ、企業が今やれることを考える必要があります。
長期的には労働人口の減少が避けられない状況ですが、女性や高齢者の労働参加率の上昇により、直近の労働人口は、2023年まで増加を続けます。
総務省の労働力調査によると、「年代別、男女別の総人口に占める一週間のうちで仕事をした人(完全失業者、休業者含む)の数」を表す労働力率に関して、2008年から2018年の11年間において、15歳から64歳の男性は85.2%から86.2%と1%の増加に止まったものの、15歳から64歳の女性は62.3%から71.3%と9%増加し、65歳以上の男性についても29.7%から33.9%と4.2%増加しています。
しかし、2024年以降は女性や高齢者の労働参加率の上昇をもってしても労働人口が減少に転じると予測されています。
長期的な見通しでは、40年後の労働人口が現在よりも4割減少すると予測されています。具体的には、2020年には6404万人いる労働人口が、2065年には3946万人にまで減少します。
このまま少子高齢化が進み15歳以上の人口減少に歯止めがかからなかった場合、労働人口は急激に減少していきます。
この予測に対して企業が取るべき対策は、「労働人口が減っても生産活動を維持するための生産性向上」と「労働参加率を高めるための雇用政策」の推進です。
労働参加率を高めるために企業ができる対策の一つが「働き方改革」です。代表的な例が、育児や介護を担う労働者への対応です。
長時間労働を前提とした働き方では、育児を担う労働者に関しては残業のある正社員という立場で働くことを選択できなくなる人が増え、労働参加率が低迷してしまいます。これに対して「業務効率化」を推進し、残業しなくても仕事を完了できる体制を整えることで、育児を担う層の労働参加率を高められます。
親の介護を担う労働者に関しては、自宅で仕事を行える「テレワーク」体制を整えることで、自宅での介護と仕事を両立することが可能となり、労働参加率を高められます。
労働人口の減少は、もはや避けることのできない状況となっています。よって、企業も人手不足が常態化する社会を前提とした経営を行わないと、生き残ることが難しくなります。
労働人口減少を踏まえた経営のキーワードとなるものが「生産性向上」と「労働参加率の向上」です。
生産性向上は、業務のやり方やプロセスを見直し、今よりも少ない労働力で現在の生産量を維持できる仕組みを作ることです。労働参加率の向上は、労働者がそれぞれの状況に応じた就労を行えるように、多様な働き方に対応できる仕組みを作ることです。
これら二つを実現させることこそ、「働き方改革」の本質的な目的なのです。
少ない労働力でも生産性を維持するためには、業務効率化を図るほかありません。すでに効率的に業務が実行できていると思いがちですが、業務フローを見直してみるとまだまだ効率化が図れる部分があることに気付くでしょう。もしかすると、コピー&ペーストを繰り返す作業や、集計作業などがあるかもしれません。このような場合にはRPAを活用することがおすすめです。
コニカミノルタジャパンではRPAの導入支援も行っていますのでお気軽にご相談ください。
RPA以外にも業務効率化に活用できるITツールもたくさんあります。詳しくは こちらの記事をご覧ください。
多様な働き方を検討する場合は、まず自社における現在の働き方を見直してみましょう。働きやすいと感じるポイントは世代や性別、家庭の状況など社員一人ひとり異なります。「アンケート」などを活用して様々な社員の意見を聞き、自社においてどこに課題があるか、特に改善すべきポイントはどこかを把握することが大切です。社内アンケートの実施はハードルが高い、という方にはたった3問の質問に答えるだけで働き方の状況を診断できる「働き方診断チャート」をぜひお気軽にお試しください。
また、自社で多様な働き方を実施する想像がつかないという方には「いいじかん設計 動画カタログ」がおすすめです。動画カタログでは中小企業における働き方改革や職場環境改善の取り組み事例をご紹介していますので、参考にしてみてください。
少子高齢化と労働人口の減少は、国家レベルの課題であるとともに、今後の企業経営の根底を揺るがすリスクでもあります。そのことを踏まえて、企業には「労働力の確保が難しくなっていく環境下での経営の在り方」というものを明らかにすることが求められています。
文責:大庭 真一郎(経営コンサルタント)
大庭経営労務相談所 所長
東京理科大学卒業後、民間企業勤務を経て、1995年4月大庭経営労務相談所を設立。
「支援企業のペースで共に行動を」をモットーに、関西地区を中心として、企業に対する経営支援業務を展開。支援実績多数。中小企業診断士、社会保険労務士。
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