はじめに、日本におけるDXの推進はどのような状況となっているのか、経済産業省が公開している資料や統計データをもとに現状を紹介しましょう。
2018年に経済産業省が「DXレポート」を発表して以来、この数年間で“DX”という言葉は着実に認知されはじめており、企業においてDXへの取り組みが重要であるという意識も徐々に浸透してきたと言えるでしょう。しかし、依然として企業によってDXの取り組み状況には大きな開きが見られることも事実です。
2020年12月に経済産業省が取りまとめた「DXレポート2」によると、全体の9割以上の企業がDXに全く取り組めていない、または散発的な実施に留まっていることが判明しました。また、このレポートの中の「DX推進指標の自己回答結果」によると、DX先行企業の平均自己評点は5点満点中3.6点であるのに対し、全企業平均は1.5点と伸び悩んでいることが分かります。
ちなみに、コロナ禍において人流を抑制するため、多くの企業へテレワークが求められましたが、テレワークの実施割合が伸び悩んでいるという事実もあります。その要因として、インターネット環境が十分に整備されていないこと、あるいは、セキュリティー対策が万全でなかったこと、さらに、社員教育としてテレワーク・リモートワークを実施する際のセキュリティーやコミュニケーションの確保の仕方についての研修が行われていなかったことなどが考えられます。
つまり、企業のDXへの取り組みが遅れたことがテレワークの導入状況にも大きな影響を与えたと考えられるでしょう。
経済産業省の「DX推進ガイドライン Ver.1.0」では、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義づけています。しかし、企業によって業種やビジネスモデル、風土は異なり、取り組みは画一的ではありません。
DXが進まない根本的な原因としては、自社で具体的に何からはじめれば良いのかが分からず、はじめの一歩が踏み出せないことが考えられます。そこで、まずは他社の成功事例や取組事例を参考にしてみましょう。自社に求められる取り組みのヒントになることもあります。
経済産業省では、DXに向けて優れた取り組みを実施している企業を「DX選定銘柄」として公表しています。今回はそのなかから、DXに向けたデジタル化の一例をいくつか紹介しましょう。
なお、コニカミノルタジャパンにおいても、これまで多くの企業の働き方改革やDXに向けた様々な支援を行ってきた実績があります。それらの事例も以下のページにまとめてあるので、ぜひ参考にしてみてください。
大手通信企業では、「情報革命で人々を幸せに」を経営理念に掲げ、社会・産業・企業のDXに取り組んできました。
具体的には、業界リーディングカンパニーやスタートアップ企業と共創することで、それぞれの企業、社会、産業が抱えている課題解決を図っています。例えば、ビルや街からリアルタイムのデータを集積、活用して、必要な人に価値ある情報を提供できるSmart City Platformを開発し、スマートシティモデルケースの構築に取り組んでいます。また、ヘルスケアアプリを開発して、医療従事者の過重労働や、増大する医療費増加といった社会課題の解決を実現するために、健康医療相談、病院検索、一般用医薬品のECサイト紹介などの情報提供が可能なサービスを展開しています。
さらに、社内のDXを推進するべく、RPAやAIなどのデジタルツールを活用してワークフローの自動化を実施。業務効率化を実現しました。
RPAを導入すると、人の作業時間を削減し、その分コア業務に集中できるようになります。コニカミノルタジャパンでも、ニューノーマル時代の働き方の一つとしてRPAに注目しています。次の記事では、RPAを上手く使いこなすためのポイントを、コニカミノルタが実践した経験に沿って紹介しているので、ぜひご覧ください。
ある大手建設企業では、建物を建設して終わりではなく、その後の運用やメンテナンスも自動化しDXにつなげています。
具体的には、ロボットやカメラ、センサーなどのデバイスをネットワークに接続し、様々な地点のデータをクラウド上で管理。空調や照明、エレベーターといった設備の効率的な制御に役立てています。また、ビル入館時の顔認証システムや、ICカードによる入退管理も可能にしています。
なお、コニカミノルタジャパンにおけるビルメンテナンス関連での事例としては、ネットワークカメラMOBOTIXを活用したオフィス管理があります。オフィスの混雑状況を把握したり、温度を検知できるサーマルカメラで発熱の疑いがある社員をリアルタイムで検出したりといった用途に活用。さらに、オフィスにいる人に消灯促進を音声で行い、カメラから管理者へ状況報告をするなど、オフィスの消灯管理業務を一部自動化することにも成功しています。
建設機械や農機具の製造を手掛けている大手メーカーでは、故障診断に3DモデリングやARを活用しています。スマートフォンの専用アプリを使用し機械の外観を撮影することで、AR技術によって3Dモデル化。外観から大まかな故障箇所を予測可能にしました。
これにより、作業員や担当者が現地へ向かう前に簡易的な故障予測が可能となり、カスタマーサポートの業務効率化にも貢献しています。
ある大手物流企業では、自社が取り扱ってきたこれまでの物流データをビッグデータ化することに成功しました。季節やキャンペーン、商品特性といった多様な情報を機械学習によって分析し、倉庫作業や配送トラックの手配を最適化しています。
従来、倉庫作業にかかる人員のアサインや配送トラックの手配は、経験豊富な担当者や現場責任者の勘に頼るケースが少なくありませんでした。しかし、ビッグデータを分析することにより、属人的な判断や勘に頼ることなく、業務改善に成功しています。加えて、倉庫作業だけでなくコールセンター業務の予測にもビッグデータを応用し、業務品質の向上に役立てています。
契約書の作成や稟議、経費精算、勤怠管理、文書管理など、社内業務全般をワークフローシステムへ移行した企業もあります。これにより、業務フローがデジタル化され大幅な業務効率化に成功しています。
具体的には、従来の契約書や稟議書類は紙に印刷してから押印・承認を行っていましたが、業務フローが改善されたことによりオンラインで完結できるようになりました。また、経費精算も同様に、紙に印刷し受領証書(領収書および領収証)を貼り付ける手間が省けたことで簡素化に成功。さらに、経費精算システムと、社員情報および勤怠管理システムとを紐付けることで、通勤定期代の計算や残業時間・有給休暇の管理も一元化に成功しています。
社内業務をワークフローシステムへ移行するためには、従来の紙ベースの運用からペーパーレス化が前提となるため、テレワークにも移行しやすくなるでしょう。
なお、ペーパーレス化に伴うドキュメント管理にあたって、ワークフローシステムの選定ポイントや押印作業の問題を解決するためのヒントを以下の記事や無料配布資料でも紹介しています。こちらもぜひ参考にしてみてください。
DXの最終的なゴールは、デジタル技術を用いたビジネスモデルの変革と言えます。しかし、そのためには小さな取り組みから着実に実行していくことが重要です。小さな成功事例を積み重ねていくことで、デジタルに強い企業や組織へと成長し、さらにその先に、デジタルを活用したビジネスモデルのアイデアが生まれることが期待できます。
そのため、DXの取り組みにあたっては、いきなり大きなテーマに対して取り組むのではなく、身近で小さな取り組みからスタートさせることが重要と言えるでしょう。多くの企業に共通する取り組みの一例としては、テレワークへの移行が挙げられます。業務プロセスやワークフローのデジタル化に向けて、ペーパーレス化からスタートしテレワークに移行できる体制を構築することが重要。コニカミノルタジャパンではテレワーク実現への支援も行っています。ぜひお気軽にご相談ください。
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いいじかん設計 編集部
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