半日かかる1万件の宛名チェックが1時間に。年賀状のフタバ社が、バリアブル印刷にVariable Studioを選んだ理由とは

フタバ株式会社
(フタバ株式会社 写真右から 常務取締役 事業開発部長 市川 宗一郎様、代表取締役 市川 隆史様、生産業務グループ リーダー 安藤 聖二様)

企業プロフィール

企業名

フタバ株式会社

所在地

愛知県名古屋市昭和区白金2-4-10

設立年月日

1972年2月

従業員数

40名(契約社員含む)

企業サイト

年賀状印刷サイト

創業から50年、そして30年以上の年賀状印刷の実績を持つフタバ社

フタバ株式会社の主力事業である年賀状印刷事業

「年賀状はフタバ」のキャンペーンCMで知られ、年間6,000万枚もの年賀状印刷を手掛けるほかお祝い袋などのポチ袋の企画・販売しているフタバ株式会社。同社で現在常務取締役を務める市川 宗一郎氏に、事業概要について伺った。

「弊社の主力事業である『年賀状印刷事業』では、受注サービスである名入れ印刷サービスとパック入り年賀状販売という2つの柱を軸に展開しています。年賀状印刷で30年以上の実績に基づくノウハウにより、笑顔あふれ心温まる年賀状を企画・デザインし、販促や売り場づくりまでサポートしています。

また、創業50年を迎えた2022年には、次の50年を見据えた『NEXT50プロジェクト』を立ち上げました。経営陣だけでなく社員からもプロジェクトメンバーを招集し、会社としてこれから大事にしていく価値観を再定義、そして社内外へ共有しています。

その際に策定した私達のミッションが『想いを彩り、心をつないでいく。』というもの。年賀状は人から人へ想いを届けるものであるからこそ、年賀状を印刷する私たちも『心のつながり』を大切にしたいと考えています」(市川氏)

印刷コストや個人情報の問題から避けられがちなバリアブル印刷を、フタバ社はなぜ提供し続けるのか

同社では顧客からのご要望に応え、年賀状印刷サービス以外にも販売促進を目的としたDMの印刷も手掛けており、その際にバリアブル印刷を活用している。主に呉服や住宅販売といった業種の顧客からご相談を受けることが多く、ご依頼があると、あらかじめ預かっていた宛名データと掲載内容を印刷して納品する、という流れだ。

1回あたり8,000枚〜10,000枚の印刷ボリュームで、月に最低1回、多いと週1回のペースで依頼が発生しているという。

弊社にとってバリアブル印刷のサービスは、顧客サポートとしての役割を担っており、懇意にしているお客様が抱える、印刷のお悩みを解決するためにサービスを提供しています。

決してニーズが高いわけではないため、そもそもバリアブル印刷の案件はお断りする他の印刷会社さんも珍しくありません。また、宛名データは個人情報であることから、『Pマーク(プライバシーマーク)を取得している印刷会社でないとお任せできない』というお客様も多いですね。弊社ではPマークを取得しているため、DM拒否をされた受取人の方の宛名データを一覧から除外するといったメンテナンスもお受けすることができます」(安藤氏)

フタバ株式会社 安藤 聖二氏

また、挨拶状の印刷にもバリアブル印刷を使用している。1件あたり20〜30通ほどで、法要や転居のお知らせなどが多いという。

印刷会社としてバリアブル印刷を手掛けるメリットは、お客様にご提供できるサービスの幅が広がること、そしてお客様との信頼関係を築くことができることです。その反面、デメリットとしては、宛名データの取り扱いや宛名部分のデザインなど、細かいニーズを拾いすぎると、時間や稼働コストがかかりすぎてしまう点です。

そのため、バリアブル印刷のサービスを提供するには、業務を効率化するツールの導入が必要不可欠なのです」(安藤氏)

10年近く使用していたソフトウェアのサービス終了を機に、バリアブル印刷の課題や悩みを解決したかった

フタバ株式会社 市川 宗一郎氏と安藤 聖二氏

メールやSNSの普及により、年賀状の発行枚数は年々減少している一方、同社の年賀状印刷における宛名印刷のご依頼件数は年々増加しているという。以前は同社が印刷する年賀状のおよそ10%で宛名印刷を希望されていたところ、現在ではおよそ20%にまで増加しており、これは宛名の手書きに対してストレスを感じるお客様が増えていることが背景にあるという。

同社では、年賀状の宛名印刷をはじめ、DMや挨拶状の印刷にバリアブル印刷のソフトウェアを使用してきたという。他社製ソフトウェアを使用するなかで感じていた課題やお悩みについて、安藤氏にお聞きした。

「10年以上も前から他社製のソフトウェアを使用していたのですが、いくつか不便さを感じる場面がありました。

まず1つが、文字入力ソフトに登録されていない文字である外字にいくつか対応していないことです。特に名字は常用漢字以外の旧漢字が使用されることが珍しくなく、正しい外字で宛名を書かないと失礼にあたると考えられるお客様も多くいらっしゃいます。そのため、他社製のバリアブル印刷のソフトウェアに登録されていない外字を希望されるお客様には『対応できず、申し訳ございません』とお伝えしておりました。

2つ目の悩みが、組版の段階でPDFを確認しないと体裁の崩れや対応できていない外字が含まれているかが分からなかったことです。生成したPDFをスクロールして1件ずつすべて確認するには手間と時間がかかりますし、実際1万件の確認には半日もかかっていました。組版前にソフトウェア上で直接編集できれば、と何度も感じていました。

3つ目の悩みは、オンプレミス型のソフトウェアだったため、ソフトウェアをインストールした専用PCでしか作業ができなかったことです。PC自体もだいぶ古くなっていたものの、新しいPCへインストールし直すには手間と時間がかかってしまいますし、設定やデータの引き継ぎがうまくいくか不安でした」

さまざまな悩みや課題を感じながらも他社製のソフトウェアを10年以上使い続けていたところ、ソフトウェアの開発元より「販売およびサポート終了のお知らせ」が手元に届いたという。サポート終了後はPCのOSバージョンアップに対する動作検証がなくなり、保守契約も切れてしまうため、同社では急遽新しいバリアブルソフトを検討することになった。

ソフトウェアの料金を「データ作成料」として計算。バリアブル印刷の課題を解決できることからVariable Studioを選定

新しいバリアブルソフトを検討するにあたって、安藤氏はまず実際の操作感を掴むため、複数のバリアブルソフトをトライアルした。トライアルを実施するにあたり、以前のソフトウェアでできていたこと、使っていた機能が実装されていることが大前提にあった。しかし、いくつかのソフトウェアでトライアルを実施しても、以前感じていた悩みを解決できる機能が実装されておらず、なかなか移行先となる理想のソフトウェアに出会えなかった。

そうしたタイミングで出会ったソフトウェアが、リリースからまだ間もないVariable Studioだったと安藤氏は振り返る。

Variable Studioは以前のソフトウェアと同等の機能が実装されているだけでなく、外字対応やソフトウェア上で直接編集できること、そしてクラウド型であることが高評価でした。加えて、トライアルでは以下の要素についても強く印象が残りました。

  • データの内容や文字数によって、自動でレイアウトが微調整されること
  • 行書体をはじめ、使用できるフォントが豊富に用意されていること

そして以前のソフトウェアとは、機能だけでなく、料金体系にも違いがありました。以前のソフトウェアの場合は年契約だったのですが、Variable Studioは一般的なSaaSと同じく月額費用のプランを選ぶことができます。(※)総額では確かに以前ソフトウェアよりも高くなるのですが、実装されている便利な機能を考えると妥当でした」(安藤氏)

さらに同社で特徴的なのが、ソフトウェアの月額料金を印刷物1点あたりのデータ作成料として計算し、費用対効果を判断している点だ。同社では昨年、およそ18万通のDMを作成しており、Variable Studioの年間料金で計算すると、1通あたりデータ作成料は2円となる。

昨今の物価高を考慮に入れても、データ作成料で2円の値上げは妥当な金額ではないでしょうか。何より、1通あたりのコストをしっかり説明できることは、費用対効果を考慮する上で重要なことです。

この数字をもとに考えると、一般的な印刷会社の場合10万通以上のバリアブル印刷のニーズがあれば、Variable Studioのコストはほとんど気にならないと思います」(安藤氏)

※ Variable Studioでは、月額費用と年額費用のプランをご用意しています。

1番のポイントは、クラウド型のソフトウェアであること。Variable Studioを実際に使用してみて

フタバ株式会社 安藤 聖二氏

Variable Studioの契約後、10年以上ぶりに新しいバリアブルソフトを使用することになった安藤氏。当初は戸惑いや苦労もあったと話す。

「まったく分からない状態からスタートしたため、機能や操作のコツを掴むのに最初は苦労しました。オンラインマニュアルを読みながら一通りデモを操作した結果、想像していたよりも直感的に操作できたため、データの取り込みから印刷の流れを理解するまで、2日しかかかっていません」(安藤氏)

2023年9月現在、同社では主にDMの宛名印刷でVariable Studioが活用されている。顧客によっては、ハガキの表面(宛先を書く面)の下部に広告が印刷されているため、縦書きの宛名が入り切らず、横書きのみの設定をするなど、顧客のニーズごとにレイアウトパターンを設定しているとのことだ。

また以前のソフトウェアを使用していた頃に感じていた、わざわざPDFで確認しないと体裁や外字のミスを修正できなかった悩みも解決されている。編集画面で確認、直接編集できるようになり、また、編集画面上に表示される黄色の警告表示のおかげで宛名データの確認作業が格段に速くなっているという。

さまざまな機能を評価いただく中で、特に安藤氏が強調するポイントは、Variable Studioがオンプレミス型ではなくクラウド型のソフトウェアであることだ。

「クラウド型のサービスの最大の魅力は、サービスが継続される限り定期的にアップデートされていくため、常に最新版の機能が使える点です。オンプレミス型の場合はアップデートに追加費用がかかってしまったり、自分で設定をしなければならなかったり、継続して使っていくだけでも大変です。しかしクラウド型であれば、自動でアップデートされて手間がかからず、常に保守されている状態です。

さらに専用PCは必要なく、インターネットに接続できれば誰のPCでも問題ありません。今後、私以外の誰かにバリアブル印刷の業務を引き継ぐ際の手間がかからないのは、属人化を避ける上でも重要なことです」(安藤氏)

「100点満点中、100点満点」。半日かかっていた1万件の宛名チェックがたった1時間に

以前のソフトウェアからVariable Studioに変更したことでクオリティにも変化はなく、安藤氏がイメージした通りの仕上がりだという。Variable Studioを「100点満点中、100点満点だ」と評価する安藤氏に、今回のソフトウェア移行で得られた成果をお聞きした。

Variable Studioの導入からまだ日は浅いものの、明らかに目に見える成果が出始めています。バリアブル印刷の作業にかかる時間と手間が削減され、体感的には半分近くになっていますね。以前は1万件のチェックに半日かかっていましたが、現在はVariable Studioの黄色い警告が出ていないか確認し、最後に目視チェックするだけですので、1時間とかからずチェックできています」(安藤氏)

フタバ株式会社 市川 宗一郎氏

華やかな加工技術による印刷と、縁の下の力持ちな宛名印刷、両方をしっかり継続していきたい

加工技術 年賀状

2021年には、京都・六角通りで生まれた100年以上の歴史あるペーパーブランド「ROKKAKU」の事業譲渡を受け、箔押しやテクスチャー加工などの職人技による加工技術を、今後さらに年賀状や挨拶状などに活かしていく予定とのことだ。

華やかな印刷技術にも注力する一方、バリアブル印刷による宛名印刷では、受け取った方に“違和感を抱かせない”という当たり前のクオリティを、当たり前に続けていくことが大事だと、安藤氏は強調する。

「DMや挨拶状を受け取った方が、もし宛名のバランスや誤字に違和感を抱いてしまったら、それが失礼に当たることもありますし、最悪の場合はDMの内容を見ずに捨てられてしまいます。

だからこそ、宛名印刷は受け取った方に違和感を抱かせず、受け取ってすぐにDMの内容に目を移す状態が望ましいのです。例えるなら『縁の下の力持ち』のような、“当たり前”の宛名印刷のクオリティを、今後も“当たり前”のようにしっかり継続していき、お客様から頼られる存在であり続けたいですね」(安藤氏)