ビジネスソリューション


磯貝 嘉孝

入谷 悠

林 貴子

池田 裕介

川島 秀一

齋藤 豊

瀧村 量
磯貝:次世代bizhubの商品コンセプトは、ネットワーク機能の充実による新たなワークスタイルの提案です。これまでの複写機ベースの複合機にとどまらない、新たな価値の提案ですから、プロダクトデザインはその価値をストレートに分りやすく表現する必要があると考えました。

全体のイメージは、従来の複写機の延長上にあるものではなく、ネットワーク上のゲートウェイである事を表現した新たな存在感を目指しました。検討を重ねた結果、ユーザーへの情報を表示する部分を集中的に配置し、その部分をホワイトラインで構成、「ネットワーク」の象徴として表現のコアとすることを決定しました。一方では、オフィスの中で邪魔にならない「スマートで心地よい」佇まいとすること、複写機のイメージである「大きな白い箱」から脱却すること、またこれまでのbizhubからの継承性を表現することといった考えから、モノカラーの2トーンで行く方向に収束して行き、黒い筐体の中にホワイトラインを際立たせるというカラーリングコンセプトが決まりました。しかしこれまでの商品とは全く違う色遣いですから、実際の製品化は慎重に進められました。まず、基本色となるブラックについては、明度の違う3色を実物大モデルで用意し、海外を含めた販売会社それぞれに送ってアンケート調査を行っています。調査に当ってはデザイン部門からリサーチャーを送り込むという、これまでになく大がかりなものでした。また、ホワイトの部分についても、プラスチック材料の特性も考慮して、色味も僅かに赤味のもの、青味のものなどを試して全体の雰囲気の違いを確認するなど、試行錯誤を繰り返しました。
入谷:このグレー部分は、基本的にユーザーの操作部、特に給排紙部分の目印として遣う色として設定しました。これは、ユニバーサルデザインの観点から、用紙の視認性を高めるためと、原稿のセットや出力紙の取り出しの際に、その場所が一目でわかるように考えたものです。また、本体の大部分が黒なので、全体の印象が重くなったり、メリハリが無いデザインに見えないように、バランスを取る効果も持っています。

入谷:このフォルムを実現するためには、筐体の基本的な面をフラットにする必要があります。しかし、そうするためには、構造的に最も外に出た部分に面を合わせなければなりませんから全体が大きくなってしまいます。従来は部分的な突出もよしとしていたこともあったのですが、今回は構造の設計者にもかなり無理を言って、部分的な突出を無くすように努力してもらいました。また、フラットとは言っても、単純な四角い箱では表情に乏しいので、四方の角を大きく丸めた形状を基本フォルムとしています。通常はこの部分にフレームなどが詰まっているので、フレームの曲げの位置やプレスの形状を調整してもらうなど、設計者に苦心してもらった点は数多くあります。そのおかげで、シンプル&フラットなフォルムでありながら、ひじょうにコンパクトな筐体を実現できたのです。

池田:基本的なインターフェースの構造は、カラーになったからといって変わることがないのですが、「カラーを使うことで何の効果を上げるのか、何のためにカラーを使うのか」をかなり検討しました。インターフェース全体の統一感を出すためには、画面の背景やキーなどの基本となる操作部に使用する色を絞り込んだほうがいいのですが、一方では、カラーパネルであることをアピールしたデザインも求められており、このバランスをどこでとるかの難しさはありましたね。解像度が高く、高精細なカラーLCDを活かした機能としては、コピーの設定に合わせて、画面の左側にコピーの仕上がりのイメージをアイコンの組み合わせで表示させていますが、これは今までにない機能だと思います。
斎藤:今回の高精細なカラーLCDに合わせた可読性の追求も行ないました。このLCD上で文字が大きくクッキリと見えるように、読みやすい英数字フォントを新たに作っています。
磯貝:従来からユニバーサルデザインにはかなり力を入れてきましたが、今回ももちろんその思想を受け継いでいます。代表的な部分としては、コントロールパネルの上下チルト、原稿セットやプリント排紙部の高さと奥行き、自動原稿送り装置の把手、給紙トレイ開閉把手の上下アクセス、給排紙トレイ表面の凹凸などがあります。新たに加わったものとしては、コントロールパネルの左右回転や青色LEDランプの採用などがあります。コントロールパネルの左右回転では、統計的に見て背の高い人、低い人に使ってもらったり、車椅子に座って操作してみるなどのシミュレーションを行って、適正位置を求めていきました。
林:機械の内外にある矢印や文字、イラストなどの操作部表示のコントラストも調整しました。これを調整し、文字フォントもより現代的なものに変えることで、スッキリと易しい印象に仕上げています。こうした全体のバランスを取る事も、ユニバーサルデザインの一つだと考えています。
川島:ソフトウエア面でも従来からの思想は継承しつつ、カラーLCDの特性を活かし、目の不自由な方にも、見づらくなることがないようなカラー配色を設定したり、「作業の目的から探す」ヘルプを搭載することで、使う人にとって必要な機能を見つけやすくしています。また、ファクス/スキャン機能の画面にも拡大表示機能を搭載しました。
磯貝:今回のbizhubシリーズのデザインコンセプトを社内提案するにあたっては、いくつかの困難も予想されました。これまでにないシンプルなデザインは設計的なハードルが高く、その色遣いが業界では異例であることから販売面でのリスクを懸念する声もありました。そうした不安を解消し商品化を実現するためには、コンセプトとその意義を徹底的に理解してもらう必要があると考えました。初期段階では企画、開発、生産部門に向けたプロモーションムービーを製作し、コンセプトモックと併せて説明会を繰り返しました。その後、広告宣伝部門と協力して販売部門向けのプロモーションムービーを製作し、各地の販売担当者に向け配布していきました。世界各地域の販売担当者が集まる会議においても繰り返し説明を行い、次世代機をアピールしていったのです。とにかく世に出しさえすれば必ず受け入れられるはずだとの思いで取り組んできました。こうして徐々に理解が広まってゆき、販売準備段階では欧州においてキーアイコンである白いラインを黒地にあしらったシャツがスタッフウェアとして用意されるなど、その反響は予想以上のものでした。
また、このデザインを量産化するためには、多くの課題がありましたが、これが実現したのは、開発チームがこのデザインに込められたメッセージに共感し、労力を惜しまずにその実現に力を注いでくれたおかげだと思っています。 こうして新しいbizhubが誕生しました。これが私たちの考える、オフィスで心地よく過ごすための機器のあり方のひとつです。ユーザーのみなさまの目に映ったとき、触れてみたとき、心地よいと感じていただけたらと願っています。
